新聞など大メディアの東日本大震災の報道が「大本営発表」と揶揄されたのは記憶に新しい。朝日新聞では「特別報道部」を中心に大震災発生直後の福島、政府、東電、気象庁などの動きを細かく取材して、「プロメテウスの罠」として連載を開始した。昨年10月のことだ。
ちなみに、プロメテウスとは、ギリシャ神話で人間に火をもたらした神のこと。原子力は第2のプロメテウスの火だという。
さて、同コーナーの単行本化は連載が始まってすぐに計画されたようだ。
「朝日の子会社である朝日新聞出版(旧朝日新聞出版局)も当然名乗りを上げたが、もっとも積極的だったのが学研パブリックだった」(朝日関係者)
同社は教科書や参考書の大手『学研ホールディングス』(旧学習研究社)から生活、趣味、実用部門などを分社してできた会社だ。同書の初版印刷部数は2万5000部。出版不況の折、この部数はかなり思い切った数字だ。
「学研から出版することで、全国の小中高校の先生たちが買う。先生たちはいまだに朝日のファンが多い。この先生たちが、事あるごとに本の話をすれば、生徒や父母が影響を受けて買ってしまう。現在、小学校〜高校の1学年は約100万人。単純計算で1200万人。その5%が買っただけでも60万部の大ヒットセラーになる。アンチ朝日派も、学研出版ということで抵抗感は薄いだろう。これに父母を加えたら、相当の部数が出回ることが予想される」(出版関係者)
事実、初版2万5000部は完売、3月までに10万部の印刷が終わったとされる。朝日新聞は『プロメテウスの罠』について、「まだまだ続ける」と宣言している。第2巻、3巻が出版されるのは間違いない。
「その場合、出版元が変わることはまず考えられない。朝日新聞がいい記事を連載し、続編が出れば出るほど、学研が儲かるのです」(朝日新聞社員)
同書は一冊1238円(税別)。朝日は学研に金をもたらした。