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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 すでにそこにある勤労者の未来

 1月4日の会見で安倍総理は、「通常国会は働き方改革の国会とする」と宣言した。表向きは、同一労働同一賃金を推進するとしているが、本当の目的は、その背後に隠れている。それは、第一次安倍内閣からの悲願でもあった「高度プロフェッショナル制度」の導入だ。
 この制度は、高度な専門的仕事をするサラリーマンを、労働時間ではなく成果で評価することを可能にする制度で、当然、残業代は支払われなくなる。当面は年収1075万円以上の勤労者が対象となるが、制度導入後、適用年収が次々と引き下げられ、いずれは一般サラリーマンも適用対象になることは確実だ。米国でも引き下げが続いており、現状では、年収約200万円まで適用が拡大されているからだ。
 また、この法案が成立してしまえば、次は数百万円の手切れ金で、いつでもサラリーマンのクビが切れる金銭解雇制度の導入が待っている。

 いくら給料をもらえるか分からず、いつクビを切られるかも分からないのでは、サラリーマンのメリットはほとんどないと言えるだろう。さらに、給与所得控除の上限も、2020年から年収850万円を上限とすることが決まっており、今後も引き下げていく方向だ。そうなると、今後はサラリーマンではなく、フリーランスを選ぶ人が増えていくだろう。
 しかし、フリーランスには、さらに過酷な現実が待ち受けている。第四次産業革命の進展だ。
 これからは、人工知能とIoTの進化によって、定形的な知的労働が置き換えられていく。野村総合研究所の推計によると、日本の職業の49%が消滅するとされているのだ。その時、人間に残される仕事は何なのか。それは人工知能ではできない、創造的な仕事だけになる。
 そして、創造的な仕事は、そもそも大きな所得格差を伴うのだ。だから、創造的仕事の所得格差をみれば、サラリーマンの未来が見える。ただ、残念ながら創造的仕事の所得統計は存在しない。

 そこで、推定年俸が分かるプロ野球選手の所得格差がどうなっているのかをみてみよう。
 ここでは、年俸ランキング上位10%の選手が、すべての選手に支払われた年俸総額の何%を獲得しているのかを「10%占有率」と呼ぶことにして、『プロ野球データFreak』というサイトの1月4日現在のデータから計算してみた。
 プロ野球選手911人の中で、最高年俸の5億円を獲得しているのは、サファテ、メヒア、金子千尋の3人だ。そして、上位10%の一番下は、楽天の藤田一也内野手で、年俸1億1000万円。この上位10%が受け取る年俸は、すべての野球選手の年俸総額の54.1%に達している。つまり、上位10%の人間が半分以上の給料を持っていくというのが、創造型の仕事の特徴なのだ。
 ちなみに、国税庁の「民間給与の実態」という統計によると、パートタイマーを含むすべての給与所得者の10%占有率は25.5%にすぎない。

 所得の一極集中は、芸能人、作家、画家、音楽家、デザイナーなど、すべての創造的職業につきものだ。サラリーマンも、そうした超格差を覚悟しなければならない。

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