しかし、トヨタやホンダは、修理費保障には応じるものの、日産だけが全額補償のカードを切った形。同社は「顧客の不安を取り除くことで巻き返したい」とアピールするが、ディーラー関係者は「そこまで踏み込まざるを得ないお家の事情がある」と打ち明ける。
カルロス・ゴーン社長は早くから中国市場に着目、2003年には年間9万4000台にすぎなかった中国での新車販売が、昨年は124万台まで拡大し、GM、フォルクスワーゲンに次ぐ第3位の座にある。トヨタでさえ、中国では過去最高を記録した昨年実績が88万台だった。
何せ日産は、昨年の世界販売484万台を達成したが、うち国内販売は65万台にすぎず、もし最大の“お得意先”である中国市場で手痛いダメージを被れば屋台骨が大揺れする。
「中国で第4位につけている韓国の現代自動車は、去年から低価格車を投入して日産を追い上げている。そこへ反日デモの追い打ちだから、日産が危機感を募らせて当たり前。9月の時点では現代とほぼ並んでおり、抜き去られた可能性も大きい。ゴーン社長が『何とかしろ』とハッパを掛けるのは当然でしょう」(前出の関係者)
そんな日産の焦りを見透かしたかのように、中国の邦人社会では「メチャメチャに壊されたと嘘八百を並べて新車をせしめようとする輩が続出するのではないか」との懸念が広まっているという。まだトヨタ、ホンダは追随の動きを見せていないが、これで“日産ルール”が中国に定着するようだと「日本はカモ」の嘲笑が聞こえてきそうだ。