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本好きオヤジの幸せ本棚(56)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『正義という名の凶器』(片田珠美/ベスト新書 840円)

 本当は正当な理由があるわけでもないのに、ただいら立ちを発散したいために理由を無理やりこしらえて怒りを表明する、という人がいる。社会の暗黙のルールとして、大義名分があれば周囲の人は怒りを是認せざるを得ないし、吠えている当人も自分自身に対して言い訳がつく。子供のように癇癪を起こしているのではなく、大人としてきっちり自己主張しているのだ、と。
 本書はこういうごまかし、屁理屈を精神科医の立場から鋭く突き、問題提起するという内容になっている。以前、この書評欄で同じ著者の本『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』(光文社新書)を取り上げたことがある。日常で怒りを小出しにしながら他人に迷惑をかけている人の内面を分析している著書であった。本書はさらに追究の姿勢が深まっていて、正義という名のもとにマイナス感情をあらわにする人々を分析対象にしている。たとえば国際戦争の場合、敵対する双方が正義を振りかざすのは常道だが、殺し合いであることは間違いない。インターネットでは匿名の無数の人間が芸能人のスキャンダルを「許せない」という正義のもとに糾弾する。彼ら彼女らの本質、本性を掘り下げていく著者の筆致は辛辣で隙がなく痛快だ。
 「自分も日々、巧みな言い訳を使って怒りを爆発させていないだろうか?」と省みるのに最適な本である。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『AKB48 総選挙公式ガイドブック2013』(講談社・1200円)

 いよいよ6月8日に迫った開票日。有名な話だが、AKBに関連しない第三者機関にわざわざ集計を依頼し、さらに弁護士による監視の下、厳正に開票を行っている。終盤戦、ここに懸ける彼女たちの“必死さ”をあらためて堪能しよう。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 書店の棚には健康情報誌が多く並んでいる。団塊の世代を中心としたシニア層に需要が高く、売れ行きも好調だという。
 手にとった1冊が『わかさ』(わかさ出版/580円)。毎号一つのテーマだけで構成した大特集主義の雑誌で、記事のボリュームは厚い。最新号では「腸」を取り上げているが、バックナンバーを見ると前号は「視力」、その前は「ひざの痛み」。いずれも中高年には身近で重要な題材を、丁寧な作りで紹介しているところがうれしい。
 「腸」の健康を損なうと便秘になる。便秘は食中毒、大腸炎、ガン、ボケ、腰痛を招く。そうした身体のメカニズムを解説した上で、誰でも簡単にできる体操、食事、ツボマッサージなど改善法を満載した特集だ。読み応えがあり、すぐにでも役に立ちそうである。
 執筆陣も、名立たる名医や大学教授たち。忙しい中年サラリーマンも自宅で手軽に実践できる健康法、ぜひこの機会に一読を。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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