統合を花道に“早期引退説”が公然と囁かれてきた斉藤惇CEOとすれば「それ見たことか」と胸を張りたいところだろう。しかし、関係者は至って冷ややかだ。
「全体の底上げがあったのだから当たり前ですよ。今思えば東証の社長だった斉藤さんは昨年、収益拡大を狙って東証2部から1部への指定換えを積極的に進め、自分の地位を守ることに汲々としていましたね」
東証は規制緩和を名目に上場に当たっての審査期間を大幅に短縮し、指定換えの旗を振った。昨年1年間で2部から1部へ指定換えしたのは36社に上る。名前を聞いてすぐに思い浮かぶところでは、柿の種やハッピーターンの『亀田製菓』、学習塾の『早稲田アカデミー』などだ。'09年は2社、'10年は10社だったのだから、まさに“ラッシュ”の言葉がピッタリくる。
「東証1部へ指定換えすれば上場料がアップするだけでなく、増資した場合にも“ショバ代”が転がり込む。当時、世間は東証と大証の経営統合にばかり関心を示しましたが、一方で斉藤さんは大証の影響力を薄めることに野心を燃やしていたのです」(前出の関係者)
結果、非上場会社だった東証は、上場会社の大証を尻目に日本取引所の主要人事をガッチリ押さえ込むことに成功、春爛漫を謳歌しているのだ。
「上場企業が増えることは結構なことですが、当然、比例して怪しい企業も増加します。最後にババを引くのは、いつも投資家なのですから」(大手証券マン)
斉藤CEOの“春”はいつまで続くことやら…。