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徹底検証・徳川埋蔵金の真実 トレジャーハンター・八重野充弘 第13回 徳川埋蔵金に最も近い男(後編)

 1992年4月に放映されたテレビ朝日の『水曜特バン!』の反響は、想像以上に大きかった。筆者と高橋喜久雄に、多くの人からのコンタクトが相次いだのだ。番組はただ掘ってみせるのではなく、徳川埋蔵金が実在する可能性の根拠と、裏付け調査の成果を示した。だから、それに触発された群馬県内の人々から、「昔こんな話を聞いたことがある」とか「こんなものを見たが関係があるのでは」といった、貴重な情報が寄せられたのである。
 高橋の強みは、何といっても徳川埋蔵金の伝説地に住んでいることだ。しかも、裏付け調査のノウハウを心得ている。以後、それこそ地を這うような地道な調査を続けていくのだが、筆者は可能な限り協力してきた。
 本シリーズの後半は、2人とそれぞれの仲間による、20年余りの探索の顛末をご紹介し、最終的にはこの伝説の真実をあぶり出して結びたいと考えている。

 さて筆者自身も、徳川埋蔵金との関わりを持った当初から、場所は赤城山麓ではなく、それより北の複数の場所だろうと思っていたが、高橋もずっと同じ考えを持っていて、筆者と知り合う前にも丸山以外の場所で発掘を行っている。その一つが猿ヶ京だ。今でも有望と思われる場所があり、筆者が地中レーダーを手配して調べたときも手応えはあった。ただ、ここも宗教関係の施設内にあって発掘は難しい。
 それ以外に、ともに発掘を行った場所は4カ所。2007年に集中的に掘ったのが、旧子持村(現渋川市)の上白井だ。昭和村の丸山と同様、ここにも古墳のように小高く盛り上がった「高立」という不思議なところがある。地元に住む男性が高橋に伝えたのは次のような話だった。

 25年ほど前、その男性は古老に連れられて真夜中に「高立」へ行った。目的は聞かされず、現場に着くと穴を掘らされた。やがて横穴の入り口が開き、古老だけが中に入っていったが、しばらくすると呼ばれ、奥にあった大きな甕を動かすのを手伝った。中身について尋ねると、「ウルシだ」という返事だったが、サラサラと金属が触れ合うような音がして液体とは思えなかった。
 「あれは小判ではないだろうか」
 徳川埋蔵金の噂と結び付け、男性はひとときもそのことが忘れられなかった。

 それから10年以上が経ち、古老が世を去ったころ、男性は一度だけ発掘を試みたことがある。ある場所を重機で掘り返したが、横穴は発見できなかった。以前行ったときは夜中だったので、横穴の位置が正しくは頭に入っていなかったのだ。
 テレビで高橋の存在を知った男性が連絡してきたのは、代わりに探してもらうためだった。だからといってすぐ掘るわけにもいかない。高橋は、この場所に関する記録を探し求めた。すると、改訂される前の古い村史の中に、次のような記述が見つかった。

 高立は幕末までは幕府直轄の空恵寺の所領であり、慶応2年9月に軍艦奉行小栗上野介忠順の名で「幕府御用船建造」のため、付近の住民の持ち山を含めた林から松材1100本を伐採することを通告する書状が、名主あてに出されている。その後、実際に武士団がこの小山を囲んで住民の立ち入りを禁じた。しかし、伐採された松材はわずか数十本でしかなく、それは利根川河畔に運ばれ、筏にして放置されたままだった。そして、武士団はいつの間にかその場所から姿を消してしまった。
 小栗はいうまでもなく軍用金埋蔵の計画、実行者といわれる人物だが、腑に落ちないのは、彼が軍艦奉行の職にあったのは元治元年(1864年)12月から翌慶応元年2月までで、慶応2年9月当時の職は勘定奉行と海軍奉行の兼任。だから、普通に考えれば、書状が作成されたのはそれより1年半以上前ということになる。計画が遅れて別人が代行したのか、あるいは、小栗が知らないところで他の誰かが名前を使ったのか。
 いずれにしろ、松材の伐採は表向きのもので、本当の目的は軍用金の埋蔵工事だったのかもしれない。
 さらに、調べを進めていくと、高立の地権者は9戸(共有)で、先祖から大事な物が隠されているという言い伝えを聞いている。これだけ材料がそろえば、調べないわけにはいかない。

 2007年春、地権者と合意書を取り交わして調査に着手したとき、高橋に情報をもたらした男性はすでに他界しており、そこで、専門の会社に地中探査を依頼したところ、山頂付近の地下3.1メートルのところに空洞のようなものがあることがわかった。同年8月に本格的な発掘を開始し、11月末までに目標地点まで掘り進めたが、空洞は現れず、調査は終了となった。
 今後、もっと精度の高い探査方法を導入して、再挑戦する計画がある。(完)

八重野充弘(やえのみつひろ)=1947年熊本市生まれ。日本各地に眠る埋蔵金を求め、全国を駆け回って40年を誇るトレジャーハンターの第一人者。1978年『日本トレジャーハンティングクラブ』を結成し代表を務める。作家・科学ジャーナリスト。

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