そのメジャーきっての名門球団は、ワールドシリーズ制覇どころか、4年連続ア・リーグ東地区優勝を逃し、ファンの不満は爆発寸前だ。そこで「およそ100年前、“最後の二刀流”ベーブ・ルースをレッドソックスから獲得して常勝軍団になったことを思い出せ」との声が日増しに大きくなっているのだ。何が何でも日本ハムの大谷翔平選手(22)を獲得すべきだ、と。
今オフのメジャー移籍が濃厚と報じられた大谷は、打者として開幕から8試合に出場し、27打数11安打の打率4割7厘。本塁打も2発放ち、メジャー・リーグのスカウト陣をシーズン73本塁打した「通産762本塁打のバリー・ボンズ級の完成度」とうならせた。
その大谷は、4月8日のオリックス戦で、走塁中に左太もも裏の肉離れを発症。昨秋痛めた右足首の故障が影響したのか、戦列を離れ早々と表舞台から姿を消した。場合によっては、骨棘を取り除く手術を受ける可能性もあるというから、日本のスポーツマスコミはこれで「メジャー移籍消滅」と報じている。しかし、これを額面通りに受け止めるMLB関係者は少ない。
大谷本人、栗山英樹監督、球団幹部が合意の上で「オフのメジャー移籍」に向けて、大事をとった可能性が高いと囁かれているのだ。いま無理をさせて「二刀流」を潰すことがあってはならない、とMLB側の期待を忖度しているとみられる。
ショービジネスにたけたMLBが、もう2度と出てこないと思われる「二刀流スーパスター」を放っておくはずがない。昨季の大谷は、投手をメーンとして日本最速の165キロを記録する一方、打者として104試合に出場し382打席、104安打、本塁打22、打点67で打率3割2分2厘の成績。'15年シーズンの大谷投手は15勝、防御率2.24、勝率7割5分で最多勝、最優秀防御率、勝率1位の「三冠」を獲得。投手としての実力は既に証明済みだ。
「生涯通算714本塁打したベーブ・ルースは1918年、レッドソックス時代20試合に投げ、13勝7敗。同年は11本塁打し、本塁打王のタイトルを獲得しました。それが現在でも“野球の神様”と称されるゆえんです。投手と野手が完全分業化した現在の野球で“二刀流”は不可能と思われましたが、そこに出現したのが大谷。チーム再建を急ぐヤンキースは、来季の主軸に据える腹づもりのようです」(スポーツ紙デスク)
今季、ヤンキースのDHはマット・ホリデー外野手が務めているが、来季以降は空席になる確率が高い。エース田中将大も今季終了後に契約を破棄してFAになるオプトアウトの権利を有しており、行使する可能性もある。そこで、田中の後釜に備えると同時に、投げない日は大谷をDHで起用しようというのだ。
来季、ピンストライプの二刀流が見られるかも。