A:くも膜下出血は脳卒中の一つです。脳は3層の膜で保護されており、外側より硬膜、くも膜、軟膜で構成され、そのくも膜と脳との空間をくも膜下腔と呼びます。ここには血管のほか、脳を守るクッションの役割をする脳脊髄液という液体が循環しており、その血管が切れて出血することをくも膜下出血といいます。
出血の一番の原因としては、脳動脈瘤という血管のコブの破裂で、全体の80%を占めます。
また、ほかの原因として動静脈奇形などもあります。
●遺伝するリスク
脳動脈瘤破裂によるものは、遺伝することがあります。その素因がない場合は、くも膜下出血の発生率は10万人中15〜20人ほど。ところが、2親等以内にくも膜下出血になった人が1人いると、2.2〜7.8%になるといわれています。
くも膜下出血は、発症すると、約3割が治療を受ける間もなく重症化したり、亡くなったりする怖い病気といえます。
ご質問の方の場合は、2親等の祖父が亡くなられているので、心配されるのも無理はないでしょう。
しかし、ライフスタイルを見直すことにより、くも膜下出血のリスクを減らすことは可能です。
●ストレス対処が最も大切
くも膜下出血の要因は喫煙と高血圧です。まずは、禁煙が原則。そして、血圧をよい状態にコントロールすること。また、多量の飲酒も、くも膜下出血のリスクを上げます。
でも、最も大切なことは「ストレス対処」です。それがうまくできないと、食生活が乱れ、運動不足にもなりがちです。
その結果、ストレスを解消しようとさらに喫煙や飲酒をしようとします。こんな状態が続けば、栄養状態が悪化して血管はもろくなり、血圧も上がって出血しやすくなります。
まずは、飲酒やタバコに頼らないストレス対処法を学びましょう。
働き過ぎや無理な生き方をやめ、いつも自然に笑顔が出るようなライフスタイルを心がけたいもの。心の余裕があれば、食事や運動など、健康に気を使う余裕も出てくるものです。
確かに家族性の場合は発症率が上がりますが、生活習慣やライフスタイルを見直すことで、くも膜下出血の発症率を下げることは必ずできるはずです。
首藤紳介氏(湯島清水坂クリニック医師)
薬だけに頼らない医療を実践。久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院母子総合医療センター等を経て、2010年より湯島清水坂クリニック(東京)に勤務。「福田−安保理論」を基盤にした自律神経免疫療法により「薬だけに頼らない医療」を実践中。