高齢者は、食欲や咀嚼力、栄養を吸収する力が衰えてくるため、ただでさえ栄養が不足がちになる。その上、粗食に励んだりしていると新型栄養失調(低栄養)に陥り、いずれ虚弱となって心筋梗塞や脳卒中などを発症し、死に至るケースも少なくない、と医療の専門家は指摘する。
ところが、最近はこうした高齢者とは別に、朝昼晩と3食しっかり摂っている人の中に「何だか体調がすぐれない」「やる気(仕事など)が起きない」などと訴える中高年層が増えているのだ。調べていくと、これも“新型栄養失調”からくる症状だという。
見た目の体型も、痩せているわけでもなく、摂取カロリーも足りているはずなのに、なぜそうなるのか。
「実は、本人は気付いていないのですが、食事が偏り必要な栄養素が不足している。ダイエット志向が強い女性や、メタボ対策に必死な中年男性にこうした傾向が増えており、本人は普通に食べているつもりでも危ないのです」
東京・多摩医療総合センターの内科医は、こう説明し、さらに付け加える。
「新型の栄養失調は、血液中の“アルブミン”というタンパク質の一種が不足すると起こります。タンパク質は、血液や筋肉など、体のいろいろな組織を作る材料になる。ですから、タンパク質が不足するのを気付かずに放っておくと、栄養失調となり、貧血や脳出血、肺炎や骨折など、さまざまな病気を引き起こすのです」
つまり、体内で作られるタンパク質の量が、失われる量より少なくなると、低タンパク血症になって組織にむくみが出たりする。少々の偏食ならそこまではいかないが、腎臓病などの原因になる場合が多いというのだ。
今年の夏を思い出して欲しい。連日35℃を超す酷暑続きとなり、食欲も減退。さっぱりしたものしか受け付けないといって、素麺や冷奴しか食べないなど、偏食に陥った人も多いのではないだろうか。こういう人は、注意が必要になるというわけだ。
大学病院の栄養管理士で料理研究家・林康子氏も指摘する。
「素麺ばかり食べるというのは極端な例でしょうが、“健康のため”などと、カロリーやコレストロールを抑えようと、野菜や魚ばかり食べ続け、肉や卵を避けていると、(新型)栄養失調のリスクが高くなります。さらに、一人暮らしのサラリーマンは、どうしても好きな時に好きな食べ物しか食べないとか、インスタント食に頼る傾向があります。食事内容をもう少し考えながら、健康維持に努めて頂きたいですね」