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求人募集に潜むトラブル

 今年の8月の就業者数は、6278万人と1年前に比べ18万人減少し、完全失業者数は337万人、完全失業率は5.1%という数字になっている(総務省「労働力調査」)。政府は雇用対策に力を入れているが、なかなか雇用情勢の好転のメドはたっていない。

 その一方で、有料求人情報誌やフリーペーパーなどの民間の求人メディアは好調な動きを見せている。社団法人全国求人情報協会の調査によると、8月の求人メディアの広告掲載件数は43万5522件で、前年度の同じ月に比べて11.4%プラスで推移しているという。求人広告は増えているのに、なぜ雇用情勢が一向に改善しないのか?

 このたび筆者は『本当は怖い求人募集』(双葉社)を上梓するにあたって、実際に求人に応募して、面接に受ければ働くという取材を敢行してみた。その際、求人募集の掲載のあり方や、求人募集をする企業の姿勢に疑問を投げかけざるを得ない場面にしばしば遭遇した。

 面接に行った先で、求人募集には詳しく書かれていない、物品購入の必要性を突然告げられたり、業務内容のはっきりしない求人について事前に電話で質問するも、「まずは面接に来てから、話をする」の一点張りだったりする企業もあった。限られた求人募集の中では説明しきれない部分があるとすれば、電話での問い合わせの段階で、しっかりと求職者へ説明をしてほしいものであるが、それが充分になされていないことが多い。また、求人募集に応募してきた求職者から、保証金を取る偽求人詐欺ともいうべき事件も起こっている。

 この不況下で職に就けない人が多い中で、求職者らをないがしろにするような求人募集がまかり通っている現実が見え隠れしている。政府が一に雇用、二に雇用と、雇用対策に力を注ぐ一方で、そのひずみも出てきているといえるだろう。

 ただ、闇雲に日本の景気を浮揚させるために、求人の数が増えればいいのではなく、良質な求人募集をどれだけ求職者側に提供することができるのか。これが今、求められているのではないだろうか。

(「悪徳商法記者」多田文明)

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