厚生労働省が今年2月末、都道府県の平均寿命(2010年)を公表し、ちょっとした波紋を広げているが、ここからも“健康長寿”に対する見識が読み取れる。
「沖縄が長寿県転落」−−。沖縄県の地元紙『沖縄タイムス』が、厚労省の発表を1面トップで報じた。'75年から全国1位を誇っていた同県の女性の平均寿命が、3位に転落したことを大々的に伝えたものだ。
沖縄県は男性も30位で、前回調査('05年)の25位からさらに下がってしまった。
代わってトップの座に立ったのは、男女とも長野県である。この結果に慌てたのが、沖縄県の医師会。厚労省の公表当日に緊急会見を開き、「健康長寿というブランドイメージが大きく傷つこうとしている。食事や運動など生活習慣の改善に取り組もう」と県民に訴えたのである。
沖縄県は、かつては魚貝や海藻類を中心とした食事で、最も健康人の多い全国一の長寿県で鳴らした。男性も'80年代には1位だったが、'00年に26位に急落。そればかりか、肥満率も日本一となり、地元医療関係者によれば「26ショック」と呼ばれるほど大きな衝撃を受けたという。
「原因は食と運動不足です。米統治下で広がったファストフード文化の影響が広がったことも挙げられますが、男性は酒をよく飲む。それと沖縄はクルマ社会で、どこへ移動するのにも車ですからね。県をあげて食生活の改善や運動の提唱に取り組んできましたが、効果がない状況」(地元自治体関係者)
これに対し、男女ともに長寿日本一に輝く優等生ぶりを見せたのが長野県だ。高齢者医療費の少ない都道府県の一つにもあがっている。今回1位になった長野県の女性は、'65年には26位だった。'60年代には脳卒中の死亡率が全国で最も高かったため、「減塩運動」を始めたのだ。
生活改善推進員が組織され、塩分を抑えた食事の指導など「食改さん」運動に取り組んできた。そして同県佐久市は栄養士と協力し、地元食材を使った減塩と低カロリー食の「ぴんころ御膳」を開発。料理コンテストまで開くなど、啓蒙しているという。
厚労省が公表する都道府県の平均寿命ランキングは5年に1度。長野県で地域医療に取り組んできた諏訪中央病院の鎌田實・名誉教授は、「沖縄県もゴーヤチャンプルーなど本来の食事を大切にすれば復活はできます。野菜や魚が豊富で、塩分摂取量が少ないという“長寿の条件”は残っています」とコメント。さらに、「平均寿命に一喜一憂するより、充実して生きる健康寿命のほうが大事です」とも指摘している。
さて、ここで見えてきたものは生活習慣のあり方と、健康に対する自覚だ。
『ボケない100歳 2309人がやっていること』の著者で、長寿研究の第一人者でもある順天堂大学大学院・白澤卓二教授は、同著書の中で、「面倒くさがり屋でもできる“自活長寿”のコツ」を記し、「1日3食を取るべし」という食生活を提案している。
「私は世界中の疫学調査や元気な100歳以上の人への聞き取りから、いくつかの共通点を見出しました。それが“1日3食”というもの。たとえば認知症でなく元気な100歳以上の日本人1907人の調査では、9割が1日3食と答えた。1日2食は5〜7%であった」(同著書より)