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福島原発「作業員6000人」の現実[前編] ジャーナリスト・水石徹 現役作業員が内部告発! 「美味しんぼ」ではわからない監視、密告、人間不信の敷地内(2)

 こんなことが下っ端作業員に限らず起きている。下っ端を監督する立場にある上のクラスの連中が休みの日、何人かでゴルフに行った。その中の1人がプレー終了後、芝生に寝転がった。青空の下で、そうしたくなる気持ちはわからないでもない。ところが、いつの間にか、寝転がっている写真がだれかに撮られ、連中の上司に送られていたんだ。
 それだけじゃない。ゴルフの帰り「一杯やろう」となって、JRいわき(平)駅近くにある田町という飲み屋街でスナックに入った。そこで上機嫌になった1人が、ホステスと肩組んでカラオケ歌ったら、その様子までスマートフォンで撮られていた。その写真も連中の上司に送信されていた。
 寝転がったり肩組んだりするのが仕事に悪い影響を与えるわけでもないし、就業規則に違反するわけでもない。それなのに、息抜き、気晴らしの様子までいちいち上司にこっそり報告されるんだから、こんな気色悪いことはないだろう。

 スパイごときのヤツがどこにいるかわかんないから、それぞれが警戒し合うのは当然だ。休日だろうが何だろうが、どこにいても監視されている、追われていると警戒心が先に立ってしまう。そんなこんなで作業員は被害妄想になっている。下っ端、上役問わずだ。
 莫大な税金をつぎ込んでいる国もそうだと思うが、東電はじめ、元請けの鹿島、大成建設、清水建設、竹中工務店などの大手ゼネコンは、外で原発作業員に問題を起こされるのはマズイと神経をピリピリさせている。だから、監視を厳しくさせている。
 事故原発の敷地内は、北朝鮮もいいところだ。あちらじゃ、いたるところにスパイ網が張り巡らされ、家族間でも監視し合っているというじゃないか。大袈裟でも何でもなく、それが福島第一原発の現実なんだ。
 ついでに言うなら、テレビ、新聞などに「福島第一原発の真実」なんて言葉がちょくちょく出るけど、目に見える現実はあるが真実なんてありゃしないんだ。はっきり真実といえるのは、俺たちが働く現場には放射能がたっぷりあるということだけ。

 先ごろ、漫画『美味しんぼ』に端を発した福島県民の“鼻血”騒動について話を聞いてみた。
 原発作業員の中にも鼻血が出たのは何十人もいる。俺も放射能が原因かと怖くなった。しかし、よくよく聞いてみると、よそ見歩きで現場の鉄骨や重機の端に鼻をぶつけたとか、鼻クソをほじくりすぎて粘膜を傷つけたとか、盛り場で喧嘩してパンチ食らわされたとか、そんな類の話ばかりだ。『美味しんぼ』には被曝が原因とあるが、あれは俺が知る限り現実じゃない。真実かどうかは、はたして被曝で鼻血が出るものなのか、その道の専門家が調べなきゃわからない話だろ。
 現場作業員の間では、『美味しんぼ』なんて話題にもならんよ。あれは、あくまでも漫画の世界なんだという認識だから、話題にならないのは当然といえば当然。それに対して総理大臣までが口を挟み、福島県知事まで「許せない」という論調だ。放射能を浴びながら、汗水流して働いている俺たちにとっては、バカバカしい限りだよ。「被曝で鼻血が出た」と漫画で描かれて、どうして、あんなに問題になるのか理解に苦しむね。

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