「心情的なものを含めて、最有力候補は新井(貴浩=39)でしょう。阪神で事実上の戦力外となりましたが、古巣に拾われて単に復活しただけでなく、4番として打点王のタイトル争いまで繰り広げています。今年は自身の2000本安打も達成して優勝に花を添えました」(ベテラン記者)
新井は昨秋キャンプから1日2000スイングを自ら課して復調した。その影の努力が若い広島ナインを刺激し、優勝に結びつけたと言っていいだろう。
9月17日時点での新井の成績は、打率3割1厘、安打数133、本塁打18、打点98。その広島に「6勝17敗」と勝ち星を献上したお得意サマが阪神で、その4番で同じ39歳の福留孝介は打率3割9厘、安打数134、本塁打11、打点56。大きく違うのは「打点」だ。
「打率、安打数で大差のない福留と新井が『打点』でこんなにも違うのは、阪神が日替わり打線だったからですよ。広島は1番田中広輔、2番菊池涼介、3番丸佳浩をほぼ固定でき、3人とも好調だったわけですから」(球界関係者)
この3人が新井の打点王を演出したというわけだ。
「前監督の野村謙二郎氏がテレビ解説を務めたときは、『自分は菊池を(MVPに)選ぶ』と発言しました」(前出・ベテラン記者)
また、チームが「神ってる」と言われるほど活気づいたのは、高卒4年目の鈴木誠也(22)が出現したときだった。打率3割3分8厘はリーグ2位。本塁打26はチームトップで、得点圏打率は新井よりも高い3割5分2厘を誇る。“育成の広島”としては、新鮮さと将来性で「鈴木を選んでほしい」との思いも強いという。
「最多勝争いを繰り広げているジョンソンと野村祐輔の活躍も見逃せません。野村は勝率8割強を誇っているし、守護神・中崎翔太は61試合に登板し、リーグ2位の34セーブを上げています。広島が優勝を決めた時点での勝利数は82。うち42試合が逆転勝利です。打線の破壊力あってのことですが、見方を変えれば、先発投手が先に点を取られているということ。クローザーの中崎を評価する記者も多い」(前出・関係者)
精神的支柱・黒田博樹も無視できない。黒田の帰還が優勝への第一歩だった。「選手内での推薦があるとしたら、間違いなく黒田が選ばれる」の声もチーム内から多く聞かれた。
また、その黒田と新井のグッズがもっとも売上げが多いことから、営業的には「投打のベテランのどちらかに」との思いも強い。年齢的に見て新井がMVPを狙えるのはラストチャンスだが、スンナリとは決まりそうにない。
松田元オーナーが各メディアの取材で「黒田、新井の人間力。菊池、丸がすごく楽になった」と評していた。そういえば、新井帰還に動いたのは、同オーナーだった。新井への援護射撃をしたのは、存在感を改めてアピールするためか…。