まずは大神神社の成り立ちだが、特筆すべきは、本殿がなく拝殿のみという点である。ご神体は「三輪山」で、拝殿の奥にある三つ鳥居を通して三輪山を直接拝する。ご神体そのものに祈りを捧げる神祀りの形態を、今に伝えている神社なのだ。
ご神体の三輪山は古来より聖域とされ、"禁足の山"として入山が厳しく制限されてきた。今では登拝が解禁されたが、大神神社の案内を見ると、わざわざ﹁敬虔な心で入山していただきます﹂と記されているではないか。登拝には申請が必要で、撮影禁止などの厳格なルールが敷かれている。
「みわさんは、参拝者を選ぶ神社なんです。呼ばれていない人間が行こうとしても、何らかのトラブルが起こって行けなくなるんですわ」と、地元民がこともなげに教えてくれた。無理やり登ったとしても、体調が悪くなったり、帰りに事故に遭うといった例もあったそうだ…。詳細は控えるが、実は筆者も登拝を断念した者の一人である。
神様に怒られそうなことばかり書いてしまったが、もちろん、ご利益があったというエピソードは枚挙にいとまがない。大神神社は、五穀豊穣、方除け、治病、造酒、製薬、まじない、交通、航海、縁結びなどのご利益があるとされ、中でも医薬の神様や酒造りの神様として崇拝されてきた歴史がある。しかも、ご利益のパワーと願いがかなう早さが突出していることは、参拝者の多くが証言している。
ただし、神様に呼ばれた者しかご神体にたどり着けないが…。