来年以降60歳で定年退職を迎える人には、給料も年金支給もない無収入期間が生じる。これを『2013年問題』といい、政府は対応策として企業に対する雇用延長の義務付けを検討しているが、それが実現したとしても、あおりを受けた新卒者や若年労働者の就職機会が奪われかねない。
こうなるとますます“雇用貧乏国”の現実味が増し、年金を支える生産年齢人口が減少の一途をたどっていく。
「人口問題を研究する政府系機関が試算した日本の人口は、2025年に1億1927万人。このころには人手不足が加速し、かえって雇用が創出されるのではないかと考えますが、その逆です。工場のロボット化や人工知能の普及が生産年齢の減少率を上回って進み、人口減を完全にカバーしてしまう。産業の空洞化は現在より進み、国内は就職できない人たちで溢れかえります。結果的に失業者は、給与水準の低いサービス産業に殺到しますから、国内日本人の賃金の水準はますます下がっていくのです」(研究機関アナリスト)
こうした日本の暗い未来を、老いてから迎える現役サラリーマンはどう考えているのか。外資系投資銀行傘下のフィデリティ退職・投資教育研究所が、'10年2月に行った『サラリーマン1万人アンケート』を参考に見てみよう。
現在の公的年金制度では安心できないと考えている人は全体の約9割だが、そのほとんどが「老後の暮らしは不安だが、蓄えもなく、その準備もない」という矛盾した回答をしている。同調査はこうしたサラリーマンを『老後難民予備軍』と指摘する。
「老後難民とは、生きている間に老後の生活資金が枯渇し生活に困窮すること。たとえ60歳の定年時に3000万円の資産があったとしても、それを運用しないで月25万円(65歳以降は年金受給が始まると仮定して10万円)ずつ使い続けると、77・5歳で資産は枯渇してしまう。老後難民にならないためには、少々のリスク覚悟でローリターンの投資や運用をするか、少ない年金で生き抜くか、突き詰めれば2つしか選択肢はありません」(同研究所)
老後の暮らしとは、一体どんなものなのか−−。
現実の年金生活者の生活ぶりを、片っ端から拾っていこう。金はないが時間はある、というのが年金生活の最大の特徴だ。これを「毎日が日曜日」と捉えるか「膨大な時間を持てあまして辛い」と感じるかは、年金額に大きく左右される。ただ人によりけりで、金額に満足していてもそれなりの苦労はつきまとう。