芸能人が考えたドッキリに、毎週芸能人が引っかかる。齟齬が生じて当然だ。しかし、フジには70年代後半から80年代前半にかけて、『スターどっきり マル秘報告』で山口百恵やピンクレディー、松田聖子といった昭和の大スターをだましつづけた自信がある。それをどう進化させるかが、土8枠の腕の見せ所だ。
昨今のドッキリスターといえば、安田大サーカス・クロちゃん。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)では、ほぼ24時間監視され、あらゆる手段でハメられている。記憶に新しいのは、昨年末。恋愛リアリティー企画「モンスターハウス」の最終回で、東京の遊園地・としまえん内に特別設営された檻に収監。一般公開されると、予想を超える来場者が押し寄せて警察沙汰になり、企画が即中止となっている。
“ドッキリGP”はまだ、大騒動には至っていない。しかし、“水ダウ”と同じく、お笑い芸人の自宅内にドッキリを仕込む、宿泊先のホテルに襲撃するという既定路線は踏襲しているため、クレーマーのターゲットになっていることは想像に難くない。
そんな中、“水ダウ”のクロちゃんばりの新星が出現している。コンビ芸人、キラキラ関係・ワタリ119だ。真面目で、緊張しすぎてしまう性格で、現在『さんまのお笑い向上委員会』(フジ系)で大人気。元消防士というあふれた正義感、マッチョボディ、整った顔立ちは、パンサー・尾形貴弘さながらだ。
知名度はまだ低いが、昨年の『ドッキリGP』のMVP。「秒でタクシードライバーがのっぺらぼう」、「秒でシャワー中に上からオバケ」という定番にして安定のシリーズでは、オーバーすぎるリアクションで視聴者の心をキャッチ。シャワードッキリでは、股間を何度もあらわにした。最新の「秒速ドッキリ 年越しの瞬間に」では、プライベートで訪れたひとり住まいの友人宅で、全身毛むくじゃらの猛獣に襲われるというドッキリ。やはり予想を上回る驚きっぷりを見せている。
エスカレートするドッキリ業界。もはや芸人にはプライベートもプライバシーもない。ワタリがクロちゃんの二の舞いになるとの懸念もあるが、こういう道のりで人気に火が付く者がいるのも事実。あまたのYouTubeチャレンジ動画と比べ物にならないほどの時間と予算をかけて、知恵と人員を投入しているフジのドッキリ。ここに見初められたワタリは、ドッキリ業界期待のニューカマーといえよう。
(伊藤雅奈子)