「歴史的に見ると、南海トラフで大地震が起こる20〜30年前から、必ず活断層が刺激されて断層型地震が内陸各地で起こっています。19年前に起こった阪神淡路大震災も、南海トラフ地震の前に発生する断層型地震だった可能性があるほどです。淡路島で起きた震度6の地震は、南海トラフ巨大地震の前兆現象に他なりません」
“前兆現象”のメカニズムはこうだ。
「西日本がのっかっているユーラシアプレートは、フィリピン海プレートに常に引き込まれています。ユーラシアプレートがこの“引き込み”に耐えられなくなり、元の位置に戻ることで発生するのが南海トラフ地震ですが、ユーラシアプレートにも引き込まれる過程で大きな負荷がかかる。そのため、断層が活発化して内陸で発生するのが、断層型地震なのです。淡路島の地震は大型の断層型地震といえる。つまり、それだけプレートが引き込まれているということです。南海トラフ地震はいつ起きるか誰もわかりませんが、また一歩近づいたことは間違いないのです」(島村氏)
淡路島の地震が起きた後、東海大学地震予知研究センター長の長尾年恭教授も、「また一つ南海トラフ地震へのステップが上がった」と警告を発しているが、その根拠は地震の発生回数を見れば一目瞭然だ。
「長尾教授によると、西日本で起こったM6.3以上の地震発生回数を阪神淡路大震災以前と以後で比べると、前の25年間には5回しかなかったのが、以後の19年間には14回も起こっているといいます。安政の大地震(1854年)や昭和東南海地震(1944年)でも、南海トラフの巨大地震の前の10〜20年には、内陸の地震が増えたことが記録からわかっている。飛騨の群発地震も、前兆現象の一つと捉えられるのです」(サイエンス記者)
いずれも同年に起きた安政東海地震と安政南海地震を見れば、1830年に京都地震、1854年に伊賀上野地震が起きている。そして、直近の昭和東南海地震および2年後の昭和南海地震では、1925年に発生した北但馬地震、1927年の北丹後地震、1943年の鳥取地震が前兆現象と見ることができる。
先日の伊豆大島近海地震と、淡路地震に続く飛騨群発地震。これらの不気味な地下の動きが、関東直下型地震と南海トラフ巨大地震発生の“Xデー”をさらに近づけた可能性は高いと言えそうだ。