その後、スタジアムは保険金と市の援助などで再建され、本拠地としていたサッカークラブもリーグ戦に出場している。また、クラブオーナーのスタッフォード・ヘジンバザム氏は、老朽化していたスタジアムの改築費用を捻出することなく、財政破綻から逃れたとされる。しかも、作家のマーティン・フレッチャー氏が著書で指摘したように、ヘジンバザム氏はこれまでにも繰り返し不審な失火にみまわれており、サッカークラブのオーナーとなる以前に得ていた保険金の総額は現在の価値で2700万ポンド(日本円で54億円)に相当する額とされる。
とは言え、警察の捜査は早々に終結してしまい、また核心を握るオーストラリア人も姿を見せなかったため、疑惑はスキャンダルへ発展することなくしぼんでいった。さらに、警察で捜査にあたっていた元刑事が、たばこを落としたとされるオーストラリア人との面談内容などを明らかにし、疑惑をナンセンスと一蹴したのである。元刑事によると、オーストラリア人は甥とサッカー観戦しており、火災によるやけどなどで入院したうえ、当人は非常にショックを受けていたと言う。
ところが、テレビ局などの取材チームがオーストラリアでその甥にインタビューしたところ、おじ(たばこを落としたオーストラリア人)は入院していなかったと答えたのである。そして、火災を調査した判事はヘジンバザム氏を強く疑っていたともされるのだ。
現在もなお、イギリスでは論議が続いている。
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