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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 都議選で何がわかったか

 6月23日に投開票された東京都議選で、自民党が全員当選の大勝をする一方、前回選挙で54議席を獲得した民主党は15議席へと激減する結果となり、壊滅的敗北に終わった。

 今回の都議選で明らかになったことは三つある。一つは、自民党と同じ政策を並べていても勝てないという、ある意味で当たり前のことだ。民主党の政策は、普天間基地の辺野古への移設、TPP交渉参加、消費税引き上げ、原発再稼働、規制緩和推進、憲法改正と、自民党とまったく同じなのだ。政策が同じだったら、わざわざ民主党を選ぶ必要はない。
 このことは、大量の候補者を擁立した日本維新の会が、わずか2議席しか獲得できなかったことにも表れている。もちろん低い支持に橋下代表の従軍慰安婦発言が影響したことは事実だ。ただ、橋下発言以前から、維新の凋落は始まっていた。憲法改正などで自民党と協調姿勢をみせ、「自民党の補完勢力」とみられるようになっていたからだ。
 自民党との違いを鮮明にしてきた共産党が、それまでの8議席から2倍以上の17議席へと躍進したことも、自民党との違いを打ち出すことの重要性を示しているといえるだろう。

 都議選でわかった二つ目のことは、行政改革に対するニーズが根強いということだ。公務員が浴している民間を超える処遇や、政府にはびこる利権構造を打破して欲しいと都民は判断した。だから、常に行革を主張してきたみんなの党が、いきなり7議席も獲得することになったのだ。

 都議選でわかった三つ目のことは、アベノミクスが評価されているということだ。
 世論調査で見ても、今回の都議選では政党の経済政策を重視して候補者を選んだ有権者が多かった。その中で、昨年の急激な景気の後退のトレンドから、一転して好景気をもたらした安倍政権の財政・金融の緩和策が高く評価されている。

 にもかかわらず、6月24日の国会で野田前総理は、「異次元の金融緩和までになると、当然のことながらリスクが出てまいります。副作用が出てまいります。体操競技で言うならば、ウルトラCを超えて、E難度、F難度の技に挑戦しようとしている。着地ができなくて転ぶのは、安倍総理ではありません。黒田総裁でもありません。転ぶのは、痛い思いをするのは、国民なんです」と批判した。
 リーマンショック後、資金供給量をイギリスは5倍、アメリカは3倍に増やした。それで副作用が出ていないのだから、2倍に増やそうという黒田金融緩和のどこにリスクがあるのかよくわからない。そんなところしか安倍政権との違いを打ち出せないのが、いまの民主党の実態なのだ。

 もし民主党が本当に参院選で勝とうと思ったら、打ち出すべきことは、普天間基地の県外移転、TPP不参加、消費税据え置き、脱原発、弱肉強食化の規制緩和反対、護憲、そして徹底的な行政改革といった政策セットだろう。何のことはない。'09年に民主党が政権を取ったときの政策そのものなのだ。
 だが、残念ながら保守勢力がはびこるいまの民主党が、本来のリベラル派の政策を取り戻せる状況にはまったくない。参議院選挙もライバルのいない自民党の圧勝になるだろう。

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