「阪神以外のNPB各球団は、復活に一抹の不安を抱いていました。一昨年の6月にトミー・ジョン手術を受けていて、復活したのか否かを判断するデータが少な過ぎたのが積極的になれなかった理由です。ただし、これからは藤川を視察するために米テキサスまで行く必要はなく、中国・四国地区担当のスカウトが確認できますからね」(前出・球界関係者)
NPB各球団は高知での試合を見て、「復活した」と判断すれば、そこから動きだす作戦に変更したのだ。
「四国リーグのフロントの方に話を聞くと、『トランジット』という言葉をよく口にされます。つまり、NPBから戦力外通告を受けた選手が『一時的に立ち寄る場所』でもあり、それも同リーグの存在価値だと話していました。確かに四国リーグには元NPB選手も多いのです」(スポーツライター・美山和也氏)
ここで急浮上してきたのが、セ・リーグ優勝候補に挙げられながら下位に低迷している広島カープ。高知の監督は巨人、旧横浜などでコーチを務めた弘田澄男氏だが、もともと四国リーグと太いパイプを持っているのが広島なのだ。
「広島は若手選手を四国リーグに派遣して“武者修行”させています。今シーズンの広島は、中継ぎと抑えで泣かされている。期待していたヒース、あるいは中崎翔太がパッとせず、ついには昨季の新人王、大瀬良大地をコンバートさせました。それでも、まだ勝ちパターンを構築できていません」(ベテラン担当記者)
12球団のうち、クローザーが決まっていないのは緒方カープだけ。NPBは7月末まで選手の支配下登録が可能だ。藤川の復活を見極めるには「十分な時間がある」と言っていい。
「阪神時代、藤川は米挑戦を願い出ても受け入れられず、苦しみました。わだかまりがあったとすれば、やはり今回の帰還にも影響したのではないか」(前出・在阪記者)
いきなり阪神以外と契約すれば、非難もあるだろう。そして、クローザーの絶対的地位を保証できるのは広島カープだけ−−。
郷土愛を背負ってマウンドに立つ藤川への“トランジット大作戦”が、水面下で始まっている。