これに激怒したのが、リバティと共同でJ:COMを設立した住商だった。当時、27.7%の株式を保有していた住商は、KDDIに対抗すべくJ:COMにTOBを敢行、保有比率を現在の40%まで高めた。一方のKDDIは金融庁から「株式の3分の1超を取得する場合はTOBを実施すべき」と横ヤリが入ったこともあってリバティからの取得株を減らし、現在の31%強にとどまった経緯がある。ちなみに住商のTOB価格とKDDIの取得価格は、ともに1株13万9500円。今回の買い取り価格に比べれば割高だった。
「共同で設立したリバティは株を売却する場合、まず住商と交渉する株主間協定があったのです。ところが中間持ち株会社の売却を理由に協定を無視し、KDDIの足元を見透かした揚げ句に高値で売り抜いた。お陰で住商も割高なTOBを余儀なくされ、2年前の4月に両社がJ:COM事業での協業で手打ちしたのですが、今なお住商には『売られたケンカを買った』の意識が強い。KDDIだって本音では『J:COMを乗っ取りたかった』わけですから両社の感情的対立には根深いものがあります。ましてや今度はKDDI系のJCNとの統合ですから、下手すると血で血を洗う主導権争いに発展しかねません」(関係者)
それもムベなるかな。昨年暮れ、東京電力は原発事故に対する補償の一環として、保有するKDDI株(発行済み株式の7.97%)をKDDI自身に売却した。KDDIから見れば自社株買いだが、舞台裏は複雑だ。
「一時は『住商が肩代わりするのではないか』と詮索する向きが多かった。もし住商がKDDIの大株主になれば、互いに役員を派遣してポスト争いなどでつばぜり合いを演じているJ:COMで、住商の発言力が増すからです。当然、KDDIはノーサンキュー。それを知っている東電は、住商からのラブコールを断ったのです」(情報筋)
J:COMを舞台に“仮面夫婦”を演じてきた住商とKDDIが、今度はJ:COMとJCNの統合で握手したのである。一部報道によると、統合で誕生する新会社の社長にはJ:COMの森修一社長(住商出身)が就き、会長はKDDI側が出す予定だという。果たしてKDDIが、これをスンナリ了承するかどうか…。両社の思惑が、消費者置き去りの“お家騒動”に発展しないことを祈る。