オシムを惜しむのはこれで終わり。2月6日に行われるW杯アジア3次予選タイ戦前の最終テストマッチに臨んだ岡田ジャパン。この日はオシム前監督が脳梗塞で代表監督を辞任して以後初めて試合観戦に訪れた。
日本サッカー協会の川淵三郎キャプテンの猛プッシュにより、サプライズ観戦が実現したが、観客動員は国立競技場のワースト記録となる2万7342人(1997年6月22日マカオ戦)を下回る2万6972人。同時刻開催で世間の注目を集めるハンドボール男子代表による北京五輪予選の韓国戦があったとはいえ、オシムの来場サプライズは散々な結果を残してしまった。
スポンサー関係者が「オシムさんにとってボスニア戦は母国といまや第2の故郷となった日本の特別な試合。川淵キャプテンがそれを良いことに来場なんてさせるから…」と嘆いても後の祭り。それどころか「そもそもボスニア戦は協会がオシムさんのために用意したような試合。なのに来場者数はこのザマ。オシムさんの神通力がもう通じないことが証明されてしまいました。トホホ」(前出関係者)と悔いる。
この一戦でオイシイ思いをしたのは、もちろんオシムでなければ川淵キャプテンでもない。そう、不人気に眉をひそめていた岡田武史監督だ。ある協会関係者が指摘する。
「終わってみれば岡田さんにとってボスニア戦は、これまで前任者たちが培ってきたものを有無を言わさず覆せる良いキッカケになった。もうこれでオシムさんやいわゆるチルドレンたちに遠慮はしないだろうし、文句を言われる筋合いもない。だって、ボスニア戦でオシムさんがもう客寄せパンダにならないって分からせてしまったばかりか、ピッチでは自分の起用がズバリ的中してオシム派より岡田派が結果を残しましたから。岡田ジャパンはタイ戦からが本格始動でしょう」
確かにピッチでも思惑が的中した。序盤こそ決定機を決め切れなかったが、前半33分にオシムジャパンの申し子FW巻誠一郎を代え、岡田イズムの継承者MF山瀬功治を投入するや、流れは一変。その山瀬が後半3ゴールのすべてに絡む活躍で、岡田ジャパンに初勝利をもたらした。
平静を装っていたのか、試合後はポーカーフェースの岡田監督だったが、ハラの中ではさぞや高笑いが止まらなかったに違いない。オシム監督が来場したことについても「あっ、そうですか良かったですね」「そういうところに注意を払う余裕がなかった」などとかなりよそよそしいコメント。ついには「それ以上コメントしようがない」と一方的に“オシム問答”をシャットアウトしていた。
「オシムさんの労をねぎらうのはボスニア戦で終わり。これで当分顔見せ来場の必要はなくなった。それと同時にチルドレンは代表に残れるのでしょうか」とは前出関係者。お役御免となったオシム一派の残党斬りは免れられない情勢だ。