いったいレースで何があったのか? 堀調教師は戦前、次のようにレースを展望していた。「休み明けで)八分の仕上げだけど、それでも良馬場なら実力的にチャンスはある」。確かに、昨年の短距離2冠(2)(2)着の実力をもってすれば、たとえ八分のデキでも勝てるメンバー構成だった。
ところが、最も心配していたことが現実になったのだから、不運といえばあまりに不運。見えない敵(道悪馬場)にチャンスの芽を摘まれてしまったのだ。
「負けたのは残念だけど、敗因は道悪と明らか。それに、着順ほど差(0秒3)はなかったし、悲観はしてませんよ」と気丈に振る舞った。天気とケンカしても勝てる道理はなく、すでに気持ちはリセットされていた。
「幸い使った後も反動が出なかったのは何より」と笑顔を取り戻したトレーナー。その目安となった1週前追い切り(19日)は、南Wコースの大外をぶん回り、6F83秒3→68秒6→54秒2→40秒4→13秒3を一杯にマーク。意欲的な攻めで本番に向けて、確実に一歩を踏み出した。
「きょうは息をつくることに主眼を置いて、長目からやりました。大幅に良くなった感じはないが、使った分、上積みは見込めるでしょう。(一年越しの)大目標のレースだし、気持ちの面でしっかりつくっていきたい」
こん身の仕上げで勝ちに行く決意が、手に取るように伝わってきた。
スタートでつまずき、土俵際に追い込まれたキンシャサノキセキだが、神が与えたこの試練も、天気が意地悪をしない限り、乗り越えられるはず。陣営はもとより、ファンも栄冠達成のシーンを信じている。