「お前らさ、俺らが入社して1年目に出した営業成績知ってる?」
こういう面倒くさい席に着くと、1時間が永遠のように長く感じる。いや、逆にこんな会話がまったくない席に巡りあえる方が珍しいんだけど。新入社員(と思われる)後輩に対して講釈をたれて、自分の武勇伝や自慢を話して。このおっさんたちは何がそんなに楽しいんだろう。
…とは言っても、さっきからウダウダ言ってるおっさんたちや、さっさと帰りてぇみたいな雰囲気を出してる新入社員がいる、この場を盛り上げるのが私の仕事なんだよね。…でも、やっぱり、会話に入ることすら面倒臭い。
「まあまあ。彼らが3年後どうなっているのかと想像してみるのも、新人を育てる楽しみのひとつじゃないですか?」
さきほどから流れていた気まずい空気を変えたのは、私ではなく、隣にいた田崎さんだった。
その後も彼は、上機嫌でベラベラ喋り続けるおっさんたちを横目に、「なんかさ、お局様よりウザいよな。おっさんの小言って」と新入社員の耳元でボソッと話して笑わしていたかと思えば、「変な空気にさせてごめん」と私に謝ってくれたりと、本当にどこまで気が使える人なんだと感心してしまった(私がするべきお仕事なのにね)。
飲みの席だから、普段言えないことをパーッと話したくなるのはしょうがないし、そのために私たちのお仕事があるのも、重々、承知してはいる。でも、そういう場だからこそ、“男性をたてられる男性”というのが、とても素敵に見えてしまうのかも。
女の子の扱いが慣れている男性はたくさんいるけど、男性の扱いに慣れていて、相手をたてられる男性ってなかなかいないもんね。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。その後、これまでの経験を活かすため、フリーランスへ転身。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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