ロンドン五輪の放映において今回、キー局が赤字になったからだ。たとえば女子マラソンを放送したフジ豊田皓社長でさえ「今後も五輪の放送を続けていくべきか検討している」と渋い顔をみせた。
また日本テレビの大久保好男社長も「これ以上高くなると、五輪の放送に参加できない局が出てきても不思議ではない」とこぼす。
ただ“高い”と言われても、庶民の感覚ではわからない。オリンピックの放映権は、国際オリンピック委員会が日本向けの販売を電通に委託しているため、電通から購入している。
今回バンクーバーオリンピック(冬期)と合わせた放映権料は325億円。これは電通の言い値をNHKなどが強い影響力をもつジャパンコンソーシアムが丸呑みした価格だ。オリンピックの放映権料は冬期と夏季のセットで販売され、'06年のトリノ冬季五輪と'08年の北京夏季五輪の198億円あたりから急騰してきた。
次回セットとなる'14年のソチ冬季五輪と'16年リオデジャネイロ夏季五輪は360億円に引き上げられる。
「ソチとリオがこの放映権料なら、赤字幅が広がるのは確実。ロンドン五輪で“やりたくない”と言っているフジと日テレですから、ジャパンコンソーシアム内でひともめあるのは間違いないでしょう」(テレビ業界事情通)
じつは五輪放映権高騰と電通独占販売には、なにかと問題が囁かれている。
「電通とジャパンコンソーシアムの癒着が続いているともっぱら。もっと簡単に言えば、電通とNHKとの“黒い関係”ともいえます。電通は購入に関係したNHKOBの再就職などの面倒を見ています。また、そういう人物の子息も就職させたりする。これならNHKも電通の言いなりになりますよ」(NHK関係者)
ジャパンコンソーシアムは、もともとNHKが母体だった。放映権料の負担割合を見ると'76年のモントリオールではNHKが86%、日本民間放送連盟が14%だった。
だが、これ以後、受信料収入中心のNHKの負担は急減する。'88年のソウル・'92年のバルセロナではNHK80%、日本民間放送連盟20%。アテネではNHK75%、日本民間放送連盟25%だった。'06年のトリノ以降はNHKが70%、日本民間放送連盟が30%となっている。
オリンピックの影響からか、テレビ局の台所事情は厳しくなっている。10月1日、日テレは業績を下方修正した。それに株価も反応し、軒並み下落している。大手スポンサーである自動車業界も、エコ終了と中国事情から売り上げ減。宣伝費を減らさざるを得ない状況だ。
テレビ界は五輪ショックで、すでに不況に突入しているといっても過言ではない。