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中国“6月危機” 就職できない新卒者の暴動警戒

 4兆元に上る景気刺激策が議論を呼んでいる中国で、その焦点は就業問題に移りつつある。2月危機はなんとか乗り越えたが、次は6月危機。卒業シーズンを迎えて就職できない新卒者が街にあふれ、暴動を起こしかねないというのである。

 どうにか回避された2月危機。1月26日から始まる春節(旧正月)を郷里で過ごした労働者が再び都会に帰ってくるとき、仕事が見つからず暴動が起きるのではないかと心配された。今度の6月危機は大学生の就職問題だ。
 中国では大学の卒業式は6月。今年は過去最高の592万人の新卒者が見込まれている。しかしその就職活動はきわめて厳しく、約150万人が職にあぶれることになりそう。その不満が大規模な抗議行動につながりかねないと懸念されているのである。
 雇用を維持するためには、年間GDPの成長率8%が必要不可欠といわれる。ところが昨年第四半期の成長率は6.8%と大きく下回った。
 問題は、中国政府が景気刺激策として投じる4兆元の中身だ。約半分にあたる1兆8000億元が道路や送電線工事などのインフラ整備にあてられる予定。インフラ整備は景気を刺激するが、就業問題の解決にはつながらない。公共工事受注による臨時雇用は生まれても一時的なもの。持続的な就業には直結しないとみられているからだ。
 中国の長老エコノミスト・孫鄭軾氏は「4兆元の使い方はアジア金融危機のときと同じ。現状にはそぐわない。労働集約型の企業ではなく、高い付加価値を持つ企業を育てるべきだ」と語っている。

 一方、中国の経済成長を持続させるためは、就業問題と同時進行でエネルギー問題を解決しなくてはならない。かつては資源大国を称していた中国だが、工業化の急進とモータリゼーションの拡大により、すべてのエネルギーを自給することが困難になった。
 中国のエネルギー事情の特色は石炭への依存度が高いこと。エネルギー消費の約7割を石炭が占め、ほぼ自給できるという。しかしながら石油の海外依存度は高い。大慶など東部の油田で産出しているが、消費量の増加に追いつかないのが現状だ。1990年に比べて昨年は石油消費量が約5倍に膨れ上がった。エネルギー消費量も米国に次いで世界第2位である。
 石油資源の確保は経済成長のうえで欠かせない問題だ。1992年より中国の3大メジャーと位置付けられるCNPC(中国石油天然ガス集団公司)、SINPEC(中国石油化工集団公司)、CNOOC(中国海洋石油総公司)の各社が海外での石油資源開発やM&Aに乗り出した。その活動はアフリカや中東、アジア、南米など30カ国におよび、投資やM&Aの案件は140件に上るという。
 背景には、世界的な金融危機の影響で投機資金が引き揚げられたことや、油田・鉱区の権益の相場が下がったことがある。3大メジャー各社は資源価格が上がった折、安定した財務基盤を構築したため資金的にも問題はなく、権益確保に拍車がかかっている。
 さらに中国通のアナリスト・原口浩氏は「中国の財務基盤はまだゆとりがある」と指摘。その理由をこう続ける。
 「中国の国債発行残高は対GDP比率が19%ぐらい。150%を越える日本に比べ遥かにゆとりがある。あと数年は財政拡大しても大丈夫だ」
 中国の財政拡大を望むもうひとつの要因がある。今や米国の国債の21%を保有しており、日本の20%を上回っている。オバマ政権は景気刺激策として、国債を増発せざるを得ない。その引き受けを中国が担う代わりに、米国は人民元の為替レートに対して黙認するという暗黙の了解がある。
 当然ながら財政拡大には限界がある。就労問題、エネルギー問題と並んで今後の大きなテーマとなるだろう。
 労働集約型経済から高付加価値型経済へ。6月危機を心配する中国にとって、工業生産の海外へのシフト、サービス産業の発展など産業構造改革が必須の課題だ。そうそう危機が訪れてはたまったものではない。

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