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貴乃花親方が“王手”をかける対八角体制白星

 得したつもりでいても、振り返ってみれば損していたということがよくある。これこそ、まさにその典型ではないだろうか。

 いつまで経っても、不祥事と縁が切れない大相撲界。一連の騒動のきっかけとなった日馬富士暴行事件で監督責任を問われた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は、昨年12月20日の臨時理事会の冒頭で辞任を申し出て、2階級降格の役員待遇委員とはなったものの、協会処分は逃れた。履歴書に傷は付かなかったのだ。
 この先手を取った行動に、
 「キチンと処分を受けるべきだし、相撲協会も、今後の規範を作るためにも辞任を認めず、処分をすべきだった」
 という声も上がった一方、
 「さすがは元横綱、潔し」
 と評価する関係者もいた。また自ら責任を取ったため、2月2日の理事候補選の出馬は何の支障もなくなった。

 頑なに自らの信念を貫き、八角理事長(54)が辞任の意思を確かめた際も、
 「(継続は)ありません」
 と答えた伊勢ケ浜親方。粛々と史上初の理事解任の処分を受け、同じように2階級降格の役員待遇委員になった貴乃花親方(45)とは対照的で、この時点で明らかに得をしていた。

 しかし、そのツケは意外な形で回ってきた。
 昨年末、伊勢ケ浜一門は理事候補選に向けて一門会を開き、前回の理事候補選で落選した高島親方(元関脇高望山)の推薦を決めた。
 「自分から辞めて10日も経っていないのに、またやりたいでは筋が通らない」
 こんな意見が大勢を占めたため、伊勢ケ浜親方は外されたのだ。

 この計算外の展開に、伊勢ケ浜親方は不満タラタラ。一門会を欠席した親方もいたことを理由に自分も立候補する意思があることを表明し、一門は紛糾した。
 伊勢ケ浜一門に所属する親方は9人。これでは理事候補1人を当選させるのがやっとで、もし2人も立てば共倒れになり、一門から理事がいなくなる可能性があったからだ。
 このため、伊勢ケ浜一門は会合を重ね、ようやく1月22日に決着した。
 「こんな状況だから出ないよ。辞任したんだから」
 形勢不利と見た伊勢ケ浜親方が、ようやく不出馬を表明したのだ。
 得したつもりでいたのに、実は大損したことになる。

 これと逆を行ったのが貴乃花親方だ。昨年暮れの臨時理事会で処分を受けた時点で、明らかに損する側だった。しかし、その揺るがない姿勢は逆に好感を持って迎えられ、貴乃花一門内の結束も高まる一方。1月17日に開かれた一門会には、所属する8人の親方に加え、時津風一門を離脱し無所属を表明していた錣山(元関脇寺尾)、立田川(元小結豊真将)、湊(元幕内湊富士)の3親方まで参加し、大盛況だった。
 これに気をよくした貴乃花親方は、詰めかけた報道陣にこれまでの徹底した無口から一転、
 「今日は何もないよ」
 と、笑顔で話している。

 明らかに得をしたのだ。そして、いよいよ守りから反攻に打って出た。相手はもちろん、八角理事長体制。
 その一つが、初場所12日目の25日、春日野広報部長兼巡業部長代理(元関脇栃乃和歌)の傷害事件隠ぺい疑惑が突如、浮上した事。23歳の元所属力士が22歳の弟弟子に大けがを負わせ、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けていたにもかかわらず、公表しなかったことが明らかになった。

 春日野親方と言えば、八角理事長体制No.3の有力ブレーン。理事候補選前の微妙な時期だけに、春日野広報部長は対応に大わらわ。
 「もう(力士は)辞めていますから」
 こう言って火消しに懸命だったが、この不祥事発覚で八角理事長体制が揺らいだのは間違いない。

 「おそらく(事件を暴露した)仕掛け人は、八角理事長を快く思っていない人物。あるいは貴乃花親方に近い人脈ですよ」
 協会関係者はこのように見るが、この直後にもう一発、ド派手な花火が打ち上がった。昨年末の臨時理事会の席上、貴乃花親方が参加者に配布し、その後、回収された注目の“貴乃花報告書”が流出し、関係者の間で密かに出回っているのだ。

 その内容は、貴ノ岩の証言を中心にまとめたもので、貴乃花親方をはじめ、白鵬、鶴竜ら関係者を処分する根拠となった危機管理委員会の報告書とはまったく逆。
 「危機管理委員会は、『白鵬が説教している最中に貴ノ岩がスマホをいじっていた』としているが、貴ノ岩はいじっていない、説教が終わってからチラッと画面を見ただけ。また、白鵬は『日馬富士は貴ノ岩の頭を瓶で殴ろうとしたが、瓶が滑って落ちたので殴っていない』、『日馬富士を外に連れ出した』と話しているが、貴ノ岩は『瓶で殴られた、日馬富士を外に連れ出したのはアイスピックを持った時だ』と証言している。これが事実なら、殺人未遂事件。しかも、理事会は危機管理委員会の一方的な調査だけで処分したことになり、果たして、あの処分は正しかったのか、疑問が湧く」(貴乃花報告書を入手したマスコミ関係者)

 これらの貴ノ岩証言の正当性が証明されれば、八角理事長体制が火だるまになるのは避けられない。報告書を流出させた者の特定は出来ないが、もし貴乃花サイドからなら、暴露の時期を窺っていたことになる。
 八角理事長体制が沈んだ時、シーソーのように浮上するのは貴乃花親方だ。少なくとも、理事候補選の前哨戦は貴乃花親方に軍配が上がった。

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