A:結論から先に言うと、放っておいてはいけません。すぐにかかりつけ医や神経内科で受診されるようにお勧めします。理由は、一過性脳虚血発作を起こしている可能性が高いからです。
一過性脳虚血発作は、脳の血管に微小な血管が詰まり、そのため血液が流れなくなったために起こります。ご質問の方の場合、右手に異常が起こりました。このことから、右手の運動神経を支配している左大脳半球の一部で血管が詰まり、脱力が起こったのでしょう。
幸いにも、その微小血栓は数分で壊れ流れていったので、その後、血液は再び流れ麻痺は残らず正常に戻ったと思われます。しかし、一過性脳虚血発作は、本格的な脳梗塞を発症する前駆症状です。血栓を作る原因が解消されない限り、発作が起きたその3日後に本当の脳梗塞になり、一生片麻痺や呂律困難となることも珍しくありません。
●一過性脳虚血発作を見逃さないように
また、一過性脳虚血発作の背景には、心房細動や頸動脈血栓がある場合があります。心房細動は不整脈の一種です。
心房細胞があると、心臓の中に血液がよどみ、固まりやすくなります。固まった血液が血流に乗って全身を回りますが、脳の血管の中へ入って血管を詰まらせると脳梗塞を発症するわけです。これが心原性脳梗塞と呼ばれるものです。
心房細動は、加齢とも関係しており、70代では5%の人にみられます。また、頸動脈血栓症は、首を走っている動脈にできている血栓です。
頸動脈血栓症については、首を走っている頸動脈には内頸動脈と外頸動脈の二つがあります。その頸動脈が動脈硬化などで細くなると、細くなった部分に血栓ができることがあります。その血栓がはがれて血流に乗り、脳の血管に入り、血管を詰まらせると、同様に一過性脳虚血発作や脳梗塞を引き起こします。主に内頸動脈に発生します。
いずれにせよ、前述の通り早急に病院にかかり、検査を行って、脳の血管の状態を調べるべきです。
牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を牧病院(大阪市)で実践。小山病院(大阪市)院長。