「ヤミ金は、2000年に出資法の上限金利が引き下げられたころから社会問題化しました。よくヤミ金など高利貸しを『トイチ』と呼びますが、このいわれは10日で1割という法外な金利をたとえただけでなく、東京都知事登録の番号が1であること、つまり初回登録で業務実績がないという意味もありました。こうした『都一業者』は、名義を届けるため足がつきやすいという理由で減少していったのですが、その後は無登録の携帯ヤミ金融(090ヤミ金)が増加。'05年ごろから警察が摘発に乗り出すと、代わって登場したのがクレジットのショッピング枠の現金化をうたう業者です。これも警戒キャンペーンなどで減り出すと、新たな“ヤミ金”として登場してきたのが『偽装質屋』。まさにイタチごっこなのです」(ヤミ金に詳しいジャーナリスト)
福岡県警は昨年10月、質屋を装って高金利で貸付行為を繰り返していた2業者を、貸金業法違反(無登録営業)容疑で家宅捜索した。
「2社は年金を担保にして、高齢者数千人に計数億円を貸し付けていたことから、県の弁護士会消費者委員会は問題にしていたものの、警察はなかなか動かなかった。両社の利息は年96%。貸金業を規制する法律では、上限利息は年20%(貸付が10万円以下の場合)だからベラボーな金利です。ただ質屋業法の上限利息は109.5%。これは流れた物品を流通させなければならない費用がかかるからで、正規の質屋であれば違法ではない。また質屋業法では、年金担保を禁止する規定もないため両制度を悪用し、主に年金受給者をターゲットに正規の質屋と偽って営業していたわけです。借り手は満足な“質”もない。そこで形式上2000円ほどの安時計を質入れさせ。10万円を融資、年96%の金利をかすめ取っていたのです」(地元紙社会部記者)
年金受給権を担保に融資を行い、年金証書や預金通帳、キャッシュカードなどを取り上げ、勝手に貸付金の回収を行う金融業者は、すでに大きな問題となっている。これら業者は、障害者年金や生活保護、母子手当受給者など、社会的弱者をターゲットにしている点で極めて悪質だ。
周知のように改正貸金業法は、多重債務者を増やさないことを目的に施行された。しかし、上限金利の引き下げは借り手に有利に見えるものの、総量規制の導入により、急激な信用収縮を招く結果となった。
つまり零細事業主や主婦、年金生活者などの少額利用者が貸し手を失い、さまよった揚げ句、網を広げて待つヤミ金に引っ掛かり餌食になるというわけだ。
「ヤミ金はこの2〜3年で大きく変わった。口座凍結を恐れ、いかに多くの口座を確保するかに躍起になっている。携帯電話の番号や返済時の振込口座を頻繁に変え、入金後、数分で引き落とすことで摘発を逃れている。口座で彼らが特に好むのは、凍結されにくいとされる郵便貯金口座。これらを手に入れるため、ヤミ金業者自ら自分の債務者を犯罪の“手駒”として使い、『口座か携帯電話を渡せば、今回の返済はそれでチャラにする』と持ち掛けるケースが急増しています」(全国紙社会部記者)