その1つ、「平壌化粧品工場」には、ショーケースにファンデーションや口紅が並び、その脇には、グッチや資生堂など外国ブランド製品が数十点置いてある。
説明板にある成分比較表は、ここの製品が外国製と比べ遜色がないと強調しており、ロシアやイラン、中国から注文があるという。これは平壌を訪れた、さるジャーナリストの見聞の一コマだ。取材に訪れる外国人記者を乗せ、市内を走るバスは1983年の日本製だったという。
「地方都市の取材は認められませんでした。昨年、北朝鮮南部を視察した中国の研究者は『投資が平壌に集中しているため、農村の発展は遅れているようだ』と解説していますから、それを知られたくないのでしょう。言われているような停電は確認できませんでした。北朝鮮政府関係者によると、制裁で輸出できなくなった石炭が国内の火力発電所に回され、水力発電所も増やしたことで、電力事情は大幅に改善したと解説されました」(同)
北朝鮮は現在、国連による経済制裁が効いていないとツッパっている。
「韓国メディアの取材を受けた北朝鮮の幹部は『人民は国産品を愛用している。品質が劣悪の中国製品をもう使わない』とか『北朝鮮には食品と日用品を含め、すでに中国製品はない。朝鮮の家庭では子供に中国食品を食べさせず、中国製品はもう使っていない。安全でないためだ』などと発言しましたが、これには正恩氏が『国産化』を強調する手前カラクリを弄しているのです。中国製品のラベルを北朝鮮製に貼り替え、自国製品に偽って流通、使用しているのです」(北朝鮮ウオッチャー)
しかし、頭隠して尻隠さず。実際には中国製品で市場はあふれている。
「原料不足で中国で製造された商品を北朝鮮へ運び、北朝鮮製のラベルを貼ってから流通させているのが実態なのです」(同)
正恩氏は16年の新年のあいさつで、国産化を優先的に取り組むと言及し、製造技術の国産化と近代化を呼び掛けた。メディアはその後、全製品の「国産化」を大々的に宣伝した。メンツが中国製頼みを許さないのだ。