「いまの阪神に掛布氏が入閣して一軍のユニホームを着たとしても、それなりに客は増えるでしょうが、優勝は望めない。巨人の戦力が抜きん出ており、とてもじゃないがかなわない。結果、和田監督は3年連続で優勝を逃し、勇退が確実。貧打も問われるだろうから、掛布氏も責任を取らされる。そうなっては、次期監督など望みようがない。そこが狙いです。いま慌ててしゃしゃり出なくとも、いずれ江夏待望論が出てくる。われわれにとって掛布氏の緊急入閣は大歓迎。ぜひそうなってほしい、と願っているのです」
逆に考えれば、中村GMにとって掛布氏の投入は最終兵器であり、負け戦が濃厚なこの時期に投入するわけにはいかない。「絶対に阻止」が本音なのだ。
もっとも、江夏氏のユニホーム復帰は掛布氏以上に難題が多い。
1993年には覚せい剤所持で現行犯逮捕され、2年4カ月収監された。血行障害と心臓疾患の持病もある。現役時代には黒い交際が発覚したこともあった。野球への真摯な態度、情熱は認めるものの、公人ともいえる阪神タイガース監督を疑問視する人は多い。
「現在の江夏氏はカドがとれ、毛髪も薄くなり、達観したかのように丸くなった。本人が『もし刑務所に行っていなかったら死んでいた』と話すように、規則正しい生活の中で健康と本来の自分を取り戻したのでしょう。落合博満氏と雰囲気がそっくりになってきた。両者は一匹狼という共通する部分が多く、仲もいい。野球が大好きなのです。その落合氏が中日で成功した経緯もあり、阪神内にも江夏氏を思い切って起用してみては…、の声があるのは事実です。とりわけ、元監督の野村克也氏が江夏擁立を支持しており、今季の阪神がBクラスに転落すれば、この“劇薬”の投入は検討に値するでしょう」(阪神OBの野球解説者)
江夏氏に阪神監督を受ける意思はあるのか。阪神球団サイドは、条件が整えば可能性はあるとみている。“条件”とは金銭面ではなく、チーム体制だという。
「現役時代に阪神のお家騒動に巻き込まれる形で南海にトレードされ、苦い思いを味わった経験から、フロント陣の全面支援を強く望んでいる。江夏氏が最も信頼を寄せ、人間としても尊敬しているのが国民栄誉賞を受賞している衣笠祥雄氏です。その衣笠氏がGMまたは球団幹部でフロント入りすれば、江夏氏の心は動く。もう一人、これからの日本球界に必要、と高く評価しているのが、野茂英雄氏です。近鉄時代からアドバイスを送り、自分が果たせなかったメジャーでのプレーを日本のパイオニアとして切り開いた生きざまにほれ込んでもいる。玄人筋の人気が見込める野茂氏を引き込めれば、タイガース人気も浮上する。外部の血を積極的に注入することでダメ虎を猛虎に変えるのでしょう。体力的にはもって2年。チームの体質改善を終え次第、バトンを渡す考えのようです」(江夏氏と懇意のスポーツライター)
江夏VS掛布の「次期阪神監督抗争」はペナント戦以上に目が離せない。