プロ野球に新しい潮流が押し寄せている。広島が優勝を決めた東京ドーム外野席にはカープ女子が全国からどっと押し寄せ、赤一色に染まった。
近年、プロ野球のテレビ視聴率の低迷が叫ばれているが、その一方で入場者は増えている。地上波の中継が消えたことで、球場に足を運ぶファンが増えたのだが、けん引しているのはちょっと前まで「お荷物球団」と言われた広島カープと横浜DeNAの2球団なのだ。
「この流れは、来年はもっと顕著になるでしょう。プロ野球がテレビ観戦から、スマホ観戦に変わってきたからです。今年7月、Jリーグと英国のパフォーム・グループが10年間で約2100億円の放映権契約を締結し、傘下の『DAZN(ダ・ゾーン)』が来季からJリーグの試合をスマホ配信することが決まりました。ダ・ゾーンは英国プレミア・リーグ、NFL、F1も高画質で中継し、月額1750円ですべて楽しむことができる。プロ野球では広島とDeNAを組み込んでおり、両球団のファンが急増しているのです」(スポーツ紙デスク)
広島は女性向けのプロモーション「カープ女子」が大成功。JR広島駅から徒歩10分の地に新設したマツダスタジアムへ向かう“カープロード”沿いの飲食店には、赤色の看板が並び、ワクワク感を演出する。スタンドの座席も34種類あり、フードやショッピングも充実。ファンサービスに徹した米国仕様が功を奏した。
カープ女子の急増で選手も奮起。チーム打率2割7分6厘だけでなく、本塁打、盗塁、得点もリーグ1位。防御率もNo.1で球団創設67年目にして初の80勝の大台をクリア。ここに「快適な球場→女性歓迎→ファン急増→選手奮起=V」の優勝方程式が完成した。
全国で赤ヘル優勝セールがスタートしたが、関西大学の宮本勝浩教授によると、経済効果は広島県内だけでおよそ331億5000万円。'14年阪神の429億円には及ばないが、'10年中日の220億円、'13年楽天の230億円を大きく上回るという。
そのカープ人気に猛チャージをかけているのがDeNAだ。今年、横浜スタジアムを横浜市から74億円で買い取り、球場の改革に着手。靴を脱いで試合観戦できる「リビングBOX」をはじめ、試合の満足度に応じて返金する「全額返金チケット」などの企画を試み話題をさらった。
球場内の飲食店も見直し、独自の醸造ビールを販売するなど収益は上昇。徹底した「コミュニティーボールパーク」化でテレビ放映料に頼らない球団経営に取り組み、球団初のCS進出も手中にしている。
かたや、従来の古い体質から抜け出せない巨人、阪神、中日、ヤクルトのセ4球団。人気の上では、すでに勝負はついたようだ。