こんな数字がある。今季の巨人は、14日のソフトバンク戦を含めて延べ227人の投手を登板させている。そのうち先発投手の完投はたったの3人しかいない。
投手起用数でいうとセ・リーグ最多で、12球団でもオリックスの228人についで多いが、戦績では巨人がここまでダントツの首位。チーム防御率も2.98である。これはひとえにリリーフ陣の頑張りが大きいことを意味している。
とくに両リーグ最多の32試合登板の山口、リーグ2位の29試合登板の越智ら登板過多の投手らの継投策で勝ってきたところが多い。原監督も十分認識しており「彼らがいるとどうしても使いたくなる。長いシーズンを考えると休ませないと…」とシーズン中盤では異例ともいえる「越智、山口の積極的休養」を口にした。
ところが、その矢先のクルーンのリタイア。当然、戦略の練り直しが求められることになり、守護神の代役には越智が指名された。4月末から約10日間、右手中指けんしょう炎で登録抹消されたクルーンに代わって抑えに回り、5セーブを上げた経験がある。
問題は越智の疲労によるコンディションだ。「これまでも登板過多を言われてきたのにストッパー役。先発の完投が少ないし、厚い戦力の巨人は勝ちパターンに持ち込むことが多い。越智の出番が多くなるのは必然だ。精神面でも中継ぎとは大違いだし、春先に経験していると言ったって状況は全然違う。大変だよ」(巨人OB評論家)
クルーンが復帰、再登録できるのは早くても7月の下旬。それまでフル回転しなければならないリリーフ陣は夏場を前にきつい日が続く。38歳の豊田を筆頭にM中村、西村健、4年目深田…と顔ぶれは豊富だが、M中村に日本ハム時代の球威が戻らない上、西村も首脳陣の信頼にもう一つ応えきれない。
先発陣も、ゴンザレスが颯爽と登場。調子の波に乗れないグライシンガーに代わって大活躍だが、そろそろ相手チームに研究され始め、これまでのように勝てるかどうか。
内海、高橋尚もイマイチ信頼に欠ける内容で、決して巨人の先発は安定しているとはいいがたい。交流戦を戦ったパの現場首脳は「巨人にはツキ、ラッキーさがある。相手が黙っていてもコケル試合が結構あるんだよ」という。
巨人が最大のライバルとしている落合中日とは、開きがまだかなりある。だが、敵将・落合監督は強気を捨てていない。「巨人は必ず失速する。そこが狙い目だ。WBC組は夏場過ぎに疲労が出る。投手も酷使しているし、余裕のない試合をしている。5ゲーム差なら射程圏内、10ゲームぐらいなら追いかけていけば向こうから落ちてくる」。
交流戦は間もなく終わる。その後に待ち受ける長いペナントレースの中を、巨大戦力の原巨人のカジとりは不安だらけである。