『刑事コロンボ読本』町田暁雄・編 洋泉社 1780円(本体価格)
★コロンボ中毒者のための研究本
ザ・グレート・カブキあってのグレート義太夫、舘ひろしあっての猫ひろし。元ネタが分からなきゃ面白くない。昨年はアメリカでTVシリーズ『刑事コロンボ』の第一作が放送されて満50周年だそうで、それを記念したNHK−BSの特番に呼ばれて驚いた。共演した20代のグラビアアイドルが、’90年代の人気ドラマ『古畑任三郎』があくまで日本版の「コロンボ」なのを皆目ご存じない。もはやそんなご時世だとはいやはや。
アニメ『ルパン三世』でいえば栗田貫一が、主人公のルパンの声を演じるというよりは偉大な先代、故・山田康雄(クリント・イーストウッドの吹き替えなら絶対この人! でもあった)のものまねにどうしてもなってしまうように…否、それとは比較にならぬほど強烈に、“うちのカミさんがね”の決め台詞でおなじみコロンボ警部役の故・小池朝雄は単なる声優の域を超えた“名人芸”だった。彼亡きあとを受け継いだ故・石田太郎も銀河万丈も、初代がかたち造ったあのねちっこくも人懐っこくて暖か味のあるコロンボの口調(演じるピーター・フォークの地声はいたってダミ声だというのに)から逃れられないのは、あたかも死せる孔明が生ける仲達を走らすかのよう。
本書はコロンボ研究において他の追随を許さぬ著者の編集によるファンなら座右必携、決定版の1冊。各作品の解説はもちろん製作の背景や舞台裏事情、また’70年代にいかに日本で熱狂的に受容され浸透したかを当時の資料をフル動員で検証の上、三谷幸喜はじめコロンボの影響を受けた作家たちの熱き語りまで堪能できる。ちなみに、’02年の某新聞調査“心に残る名探偵”で、ホームズやポアロ、明智に金田一を抑えて1位に輝いたのがコロンボとか。恐るべし。
(居島一平/芸人)
【昇天の1冊】
女も風俗店に行く時代になったと聞き、我々オヤジ世代にとってはにわかに信じがたい話である。もちろん男のように、誰もが一度は行ったことがあるという類のものではないが、金銭を支払うことで割り切って、かつ手軽に性的サービスを受ける女性が増えてきているのは、明らかな事実のようだ。
そんな女性向け風俗の経験者や店の経営者らへ取材した衝撃のノンフィクションが、『女性専用 快感と癒しを「風俗」で買う女たち』(徳間書店/1500円+税)だ。
風俗といっても、男性向けのようにソープ、ピンサロ、デリヘルなど多種多彩な業種があるワケではなく、主に性感マッサージとレズプレイ。つまり、挿入ありの本番行為を求めているのではない。だが、女性も男と同様、あるいはそれ以上に仕事に励みストレスを感じている時代だけに、需要は決して低くないという。
また、利用する女たちは、熟女といわれる年齢になっても性的欲求がおさまらない、草食系男子の急増によってセックスに満足できない、特定の相手がいない未婚者などさまざま。何より彼女たちは、快楽に対してカネを払うことに抵抗がない。ここに見られるのは女のオス化である。
男性と違うのは、女性向け風俗に通う場合は「心」の癒しも求めているということ。欲しいのはカラダの「快楽」だけではないらしい。逆にいえば、現代の男たちは女に「癒し」も「快楽」も十分に与えていないことにつながり、何だか複雑な気持ちになってくる1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)