魚谷氏が前田会長の“おメガネ”にかなったのは、顧問にもかかわらず販売子会社や専門店に足を運び、現場の担当者の声に耳を傾けて課題の把握に努めるなど行動力が高く評価されてのことだとされている。しかし外部からの招聘には「現役員陣は社長の器にあらず」と宣言したに等しく、異論が噴出して当たり前。
現に昨年秋、前田氏が社外取締役らで構成する「役員指名諮問委員会」に候補者の一人として魚谷氏を推薦した際、「外部から入ってきた人間に資生堂の文化がわかるのか」との反対意見が相次いだ。ところが、前田会長が記者会見で明かしたところによると「複数の社長候補にプレゼンテーションさせた中で、成長に向けた戦略や熱意が明らかに違っていた」ことから、委員会は最終的に全員一致で決めたという。
「プレゼンに参加した次期社長の本命、対抗と目されていた有力候補らは“無能”の烙印を押されたわけで、とんだ恥さらしでしかない。とはいえ、経営トップにとって後継者育成は重要な任務の一つ。前田会長だって威張れたものじゃないのだがね」(資生堂OB)
文化の違いといえば、ソニー、オリンパス、日本板硝子など、外国人をトップに据えた企業が思い浮かぶ。この3社だけを見ても“平穏”とはいかないだろうと想像できるのだが…。