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〈企業・経済深層レポート〉 過去10年で最多の倒産 理美容室業界が陥った“値引き合戦地獄”

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提供:週刊実話

 大手信用調査会社、東京商工リサーチの調べによれば、昨年1〜11月までの理美容室の倒産件数が86件に達し、年間では過去10年で最多となることが分かった。

 倒産の原因は、業績不振による倒産が78件で全体の約9割。また、倒産した美容室の9割が従業員数5人未満であり、弱小美容室ほど経営が厳しいという結果となった。

 かつて「手に職があればどんな不況も乗り越えられる」と言われたものだが、もはや、そういう時代ではなくなってきたようだ。

 その背景と最近の美容業界の大きな流れを業界関係者がこう分析する。
「美容室の倒産が増えている最大の理由は、競争の激化です。美容室と美容師が増えているのに対して、人口減に伴い利用客が減少しています」

 厚生労働省の統計によると2017年度の全国の美容室数は24万7578店舗となり、10年前と比べると約12%近く増えている。国内のコンビニエンスストアの数は5万5564店舗であり、その4倍という店舗数ということになる。
「美容室は、開業での店舗建物、設備などの設備投資が比較的小さいことから、新規参入がしやすいのです。少し頑張って貯蓄して少額融資を受ければ、多くの美容師が開業できるのです」(同)

 しかし、店舗数が増えているのに反比例して、市場規模は年々縮小している。2017年度の市場規模は、約1兆5100億円だが、2018年度は、約1兆5050億円と微妙に減っている。そして2019年度は、1兆5000億円を割りそうな勢いだという。
「お店の数が増えているのに、お客さんは減っている。というのも、団塊世代から上の人たちが高齢化して、月に1度は来店してくれたのに、足が遠のいているようです」(某美容室経営者)

 地方を中心に高齢化に伴う美容室人口の減少に加え、年に数回しか利用しない客層が増加しているという。

 それに加え、客単価も低下している。
「オープン20年になるうちなんかでは、昔は何もしなくても周りの固定客で経営が成り立っていました。ところが、10年ぐらい前から周辺にポツポツ、ライバル店が現れて客が減り始めました。対策として、お店にきてくれた人に、次回利用時に10%オフになる割引券を付けるようにしたのです。しかし、それでもお客さんが増えなかったので、今度は周辺の家にポスティングで割引券を配りました。周りの店も同じようなことをやっているので、今は地域フリーペーパーにクーポン割引を付けています。それでも苦しいですね」(美容室経営者)

 ある主婦は自分の体験をこう明かす。
「1回の毛染めとカットで1万円近い額になっていました。なんとか美容代を節約できないかと探し当てたのが、激安毛染め店です。カットと毛染めで、いままで通っていた美容室の半額。さらに何度か通うと割引券が貰えるので、今では4000円ほどで済むようになりました」

 別の主婦は、安い理容室と美容室を使い分けているという。
「私は毛染めを3000円の美容室、カットは2000円でしてくれる理容室でしています。二つ合わせると5000円なので、従来の普通の美容室でやるより半額近い額でやってくれる上に、理容室では顔剃りもしてくれます。少し手間はかかると思われるかもしれませんが、2店が隣接しているのでそれほど苦ではないですね」

 別の30代の女性はこう話す。
「私の場合は、フリーペーパーや美容院サイトのクーポンを使います。ただ、初回のみのところが多いので、常連にはなりません。常に安いところを転々としていますね」

 このように利用客は、美容室を選ぶ際に価格を最重視し、サービスの質やカットの技術は二の次なのである。その結果、美容室は客を取り戻すために値引きをせざるを得ない。だが、この“値引き合戦”が美容業界全体を悪循環に追い込んでいる。

 業界関係者の中では、今後の美容業界は「二極化が進行する」と予想する人が多いという。
「生き残るには、技術のさらなるレベルアップと顧客満足度を上げることです。価格に左右されない富裕層のお客様を確実に獲得し、それらのお客様を大事にすることです。ただ、それができるのは一部の美容室だけ。多くの店舗は、1000円カットのようにチェーン店化して、どれだけ安くできるかが争点になります」(業界関係者)

 市場規模を上回る店舗増で、値引き合戦が過熱する美容業界では、今後も価格競争に負けた理美容室が淘汰されていくだろう。

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