「高野連にプロ野球関係者が参画できないだろうか」
あるプロ野球解説者の言葉だ。高野連組織を批判しているのではない。プロ野球OBのセカンドキャリアとして、今以上に門戸を広げてもらいたいという希望論である。2009年秋、NPBはフェニックスリーグに参加した中堅、若手271選手に『セカンドキャリア』に関するアンケート調査を実施した。同アンケートによれば、「将来に不安がある」なる回答が圧倒的多数を占め、引退後の進路としてもっとも希望が多かったのは「指導者」だった。なかでも、高校野球指導者がトップで、73パーセント(複数回答)を占めていた。高校野球界をはじめとするアマチュア球界への指導者復帰条件は、教員免許の取得と「教諭として2年以上の在籍を要する」となっている。「非常勤の勤務講師期間も年数に数える」など、復帰条件は緩和の方向にあり、すでにプロ野球経験者が指導している高校も珍しくなくなりつつある。
技術指導面でプロ経験者が参入すれば、それなりの効果は期待できる。しかし、審判員にも高野連組織以外の参画を認めてみたら、面白いのではないだろうか。
高校野球審判員、あるいは、高校野球審判委員は各都道府県の高野連に登録し、講習会を受けなければならない。登録するにはたとえば出身校の野球部長の推薦状などが必要で、平日の昼間でも要請があれば、審判を務めなければならないので、「審判員になりたい」と思っても叶わない人の方が多いようだ。
しかし、高校野球の経験がない審判員もいる。筆者が取材した限りでは審判員、審判委員は平均年齢が高く、「毎日が体力勝負」とも語っていた。ある登録審判員は「眼に疲れが出る」ともこぼしていた。「眼に疲れが出る」ということは、際どいコースに放られた投球の判定にも影響が出かねない。
今年7月に掲載された地方紙によれば、群馬県大会は27歳から63歳のボランティア審判員95人がジャッジするとあった。その記事には、コルセットを巻いてグラウンドに立った審判員の経験談も綴られていたが、試合を裁く労力は相当なものらしい。やはり人数の増員と、若い審判員の獲得は急務だが、「人数の拡大=質の低下」なる懸念も生じる。
私見だが、全国の大学野球連盟にチャンスを与えてみてはどうだろうか。大学の野球部員のなかには、卒業後は教員になって、中・高校の野球部を指導したいと思っていた者も少なくない。高校野球の監督予備軍でもある彼らに「勉強の機会」として、審判員の人員補充枠を提供するのはどうだろうか。審判としての経験値は少ないが、現役のプレーヤーでもあり、野球に関する知識や体力面では、全く問題はない。いや、地方大学リーグの二部、三部では、公式戦を他大学野球部員が裁いている。大学生のジャッジ経験は、プロ経験者とは違う指導の糧となり、高校野球界の発展にも繋がるはずだ。
プロ野球経験者の高校野球指導には賛成である。プロの世界で学んだ技術を高校生にも教えてもらいたいと思う。プロ野球経験者のアマチュア復帰に関する規制が緩和されたのなら、教員として指導者を目指す大学生たちにもアドバンテージを与えてもいいのではないだろうか。(スポーツライター・美山和也)