「球速そのものは去年と比べても落ちています。でも今季はカットボールを覚え、配球の幅も広がったように思います。球速が落ちてもなんとか(相手打線を)抑えているのは、カットボールのおかげでしょう」(プロ野球解説者)
今、クルーンは『正念場』を迎えていると言っていい。29日の広島戦こそ打者3人でピシャリと抑えたが、クルーンは四球や連打を浴びるケースもあり、ブルペンではゲームセットの瞬間まで別投手が待機している。これでは、クローザーの意味がない…。昨季から故障も重なったせいか、相手打者をねじ伏せるような迫力もなくなった。
こんなこともあった。22日の対ヤクルト戦(神宮球場)、クルーンは2アウトを取ったところで左足痛を訴え、降板。球団は「左足をつっただけ」と大事に至らなかったことをマスコミ発表しているが、翌23日だった。試合前の練習でグラウンドにクルーンが現れた。カメラの砲列を見るなり、片方の足を抱え、大袈裟に痛がりながら横切って行った。しかも、痛そうにしていたのは「右足」である。報道陣へのジョーク!?
「元気そうだったし、痛そうなフリをしたのは冗談だったと思います」(関係者)
原巨人はすでに『来季』に向けて動き始めている。クルーンに代わるクローザー投手を探しているとのことで、昨年オフに小林雅英を、一昨年は二岡を放出してまでマイケル中村を補強したのは、「クルーンに万が一のあった場合」を想定してのことだった。
「『万が一のあった場合』というのは表向きで、安定感のあるクローザーが欲しいんです。セットアッパーの越智(大祐)を専念させる案も首脳陣は温めていますが、セットアッパーだって人数が足りているわけではありませんので…。クローザーは外国人になると思われます」(前出・同)
巨人の“外国人”というのは、前年まで他球団に在籍していた助っ人のことだろう。クルーンは元横浜、グライシンガー、ラミレス、ゴンザレスはヤクルト、李承は千葉ロッテ。巨人が独自に発掘したのは、エドガーを除けば、『育成出身』ばかりである。「ヤクルトとの契約が今季で終わるクローザー・林昌勇に照準を絞った」との情報も交錯しているが、クルーンの心境は「まだ投げられる!」である。
「昨年オフに右ヒジを手術し、出遅れました。4月には転倒して右手親指を負傷。本人が『まだやれる』と思える根拠は、それなりの成績を残しているからです。去年の防御率が1点台でも、内容は決して良くない。首脳陣がクルーンに甘いのも、ほかにクローザータイプの投手がいないからです。1点差で登板する試合も少ないので、クルーンの救援失敗がペナントレースに直結しないだけ」(前出・プロ野球解説者)
一部関係者は、「巨人はヤクルト・林昌勇の獲得に動かない」と“断言”する。3年前、林の代理人がヤクルトと交渉する際、巨人の名前をチラつかせた。巨人は林サイドとの接触を完全否定し、「年俸の釣り上げにウチの名前が使われた」と怒り、今もそのことを覚えているという。そういう因縁をクルーンは知っているのだろう。だから、危機感が希薄なのである。
「クルーンが報道陣の前で足を痛がったのを、一部コーチも見ていたんです。ドキッとしていましたよ」(前出・関係者)
とはいえ、クルーン不在の後半戦は考えられない。報道陣にジョークを飛ばす暇があったら、「もっと練習で必死さを見せてくれ」というのが原辰徳監督の心境だろう。