毎年春になると、原稿を受け取った編集部からこんなクギを刺されております。そう言われているのに懲りずにやってしまい、年々クギが太くなっている気が…。
だって、面白いんですもの、潮干狩りが。この時期になると仕事が手に付かないくらいウズウズしてしまうんです。普段から仕事中は上の空なことが多いのに、その上…。これはきっと「潮干狩り依存症」というヤツですな。
ということで今回は、潮干狩りの定番ターゲット「アサリ」を獲るぞっ!
さて、潮が大きく引く春から初夏、それも晴天の休日ともなれば、各地の潮干狩り場は大盛況です。しかし、ワタクシはどうにもヘソ曲がりでして、混雑は大のニガテ。ましてや人の手で蒔かれたアサリを回収するような潮干狩りは、やりたくないんです。我がことながらメンドクサイ性分です…。
ということで、純天然アサリの潮干狩りをのんびりと楽しむために、広島県の宮島に熊手を携えて出かけました。“安芸の宮島”といえば、言わずと知れた日本三景に数えられている上に、島内の厳島神社は世界遺産に指定されている日本屈指の景勝地です。
今回、宮島口からフェリーに乗り込んだのですが、平日にも関わらず外国人を中心に観光客で大混雑でありました。船上から島を見やりますと、すでに潮が引いていて鳥居周辺は広大に干上がっております。
嗚呼、早く掘りたいっ!
★溜まり場発見でザックザク♪
ソワソワしながら船を降り、桟橋から厳島神社への参道を辿って浜へ急ぎます。このエリアらしく黄土色で粗めの硬く締まった砂、美しく澄んだ海水、良質のアサリ確保! の期待に胸が高鳴ります。観光客に混じって潮干狩りを楽しむ同志もまばらにいて、よい感じに獲れているようです。もう…辛抱たまらん♪
熊手で掻いていくとポロポロと出てきますよ、アサリちゃんが♪ ただし、小ぶりなものばかり。コレハドウシタモノカ…。
このままではイカン! と、冷静に考えを巡らせます。
「釣りも潮干狩りもポイントが重要。適当は禁物。明確なポイントを探さねば」
ヤりたい一心でガッついても、よい結果にはなりませんからね。
アサリのポイントといえば、地形に変化がある所。周囲を見渡し、土手状になっている所を掘ってみると、それなりのサイズがまじるようになりました。他にも小さなマテ貝やキサゴ(ナガラミ)もポロポロ出て、実に生物層豊か。飽きることがありません。
ここでふと、鳥居の左右に延びた波除け堤が目につきました。この堤の内側は潮干狩りや釣りが禁じられた聖域。ということは、この聖域エリアの広い砂地がアサリの供給源になっているのでは…。さらに、こういった障害物周りはアサリが好む環境であり、意外と侮れません。
ということで、暮れなずむ鳥居脇で堤の外側を掘ってみるとこれが大当たり! それまでよりいいサイズがポロポロ。場所によってはアサリだらけです。う〜ん、厳島神社サイコ〜!
気がつけばすっかり日が暮れ、あれだけいた観光客の姿は皆無。潮も急速に満ちてきました。
静寂の砂浜、眼前にそびえる大鳥居はライトアップされ、奥には厳島神社の本堂が見えます。あらためて見ると実に神々しく厳粛な雰囲気ですなぁ。ま、ワタクシがやっているのは潮干狩りなんですが…(俗)。
★さすがは聖地!濃厚でお上品
さて、皆様はアサリにも個性があることをご存知でしょうか? 大きくても殻が厚くて身入りが今ひとつでクセが強い個体、小さくても江戸前内湾のように模様の濃淡が濃く抜群のダシが出る個体といったように、実に千差万別なのです。今回は大きめのものを選んで持ち帰りましたが、それでも一般的には小ぶりな部類。とは言ってもプックリと全体に厚みがあり、殻が薄くて身入りはよさそう。実に旨そうなアサリばかりです。
調理法にしばし悩みましたが、純和風のアサリ飯と味噌汁で賞味することに。口を開けたアサリを見ると、これが期待どおり、いや期待以上に最高の身入り! 食べてみるとアサリらしい風味も特濃! それでいてクセはなく、上品な旨さです。
ちなみに厳島神社の境内には「鏡池」と呼ばれる三カ所の湧水池があり、また島内の森からも無数の沢が海へと流れ込んでおります。この素晴らしい環境が味の違いを生み出しているのでしょう。お土産に購入した『宮島ビール』とともに、宮島尽くしの晩酌を楽しみました。あんまり褒めて、来年混んだらイヤだなぁ…。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。