他に「手浴」「足浴」「温冷浴」など、心臓への負担軽減や低血圧の人に合った入浴法や、手足の疲れ、肩凝りなどを癒す目的の入浴の仕方もあり、それぞれ自分の体調、健康管理に合わせた入浴法を楽しめる。
ところが一方で、「風呂に入るのに、あれこれ理屈はいらねぇ。(垢や汚れが落ち)サッパリして体がポカポカすりゃいいんだよ」と、江戸っ子ばりのタンカを切る人もいるが、果たしてどうだろう。医者に生活習慣病からくる「高血圧症」を指摘されている人が、ためらいもなく熱い湯にザブン…。「それこそ愚の骨頂。脳卒中などの大病を呼び寄せているようなもの」と医療関係者は指摘する。
「高血圧を抱えている人の場合、入浴時間やお湯の温度、水分補給などに気を付ける必要があります。入浴中は汗で水分が蒸発してしまうため、いわゆる“血液ドロドロ状態”になり、血小板の塊を溶かす力が、体温の上昇と比例して弱くなり、血小板が出来やすい。その結果、血管に負担が掛かりやすく42℃以上の熱い風呂は危険で、避けるべきです。まして酒を飲んでいる時の入浴はなおさらで、絶対に避けるべき。脳梗塞、心筋梗塞などを誘発し風呂場で倒れ、そのまま死に至ることがあります」
注意すべきは高温の湯ばかりではない。「低い、ぬるめの温度」ではどうかといえば、良いとも言い切れない。理由は「ぬるい湯は入浴時間が長くなりがち」で、これも逆効果なのだ。
「湯温的にはぬるめが良いわけですが、浸かる時間はせいぜい10〜15分程度にすべきですね。それに入浴前の水分補給は守ってほしいし、上がった後も水を飲んだ方がいい。私は、半身浴が健康的な入り方と思いますが、とくに高血圧や心臓に疾患を持っている方などには、ぬるま湯をお勧めしたい」と言うのは、健康ジャーナリストの泉准也氏で、こんなことも提案した。
「高血圧の検査の一つに、“寒冷昇圧試験”というものがあります。これをすると、高血圧体質の人はすぐわかります。反応が強いのです」
寒冷昇圧試験は、片方の手を冷たい水の中に入れて置き、もう一方の手で血圧の変化を調べる簡単な検査だが、高血圧体質の人は血圧の上昇ぶりが明らかに検査計に現れる。
それだけ血圧は寒さに敏感というわけで、寒い時期は、たまたま動脈硬化、動脈瘤(りゅう)があると、それが引き金となって思わぬ血管事故につながりかねないという。
日頃、ジョギングや耐寒マラソンで体を鍛えるのも結構だが、これはあくまで若くて健康な人たちの話。もちろん血管が丈夫な人も問題が無いが、中高年で働き盛りのサラリーマンなどは注意するに越したことはない。
湯温の高い全身浴や半身浴の効果など、自分に合った入浴法で、元気で健康的な体を維持しよう。