「それが、ここにきて自民党内で噴出し始めた“安倍降ろし”の動きなのです。安倍首相が悲願とする集団的自衛権の行使容認に対し、古賀誠元幹事長を後ろ盾とする岸田派と二階派の二階俊博衆院予算委員長、河村建夫選対委員長らが猛反発。さらに、額賀派領袖で日韓議員連盟会長の額賀福志郎議員、参院に院政を敷く青木幹雄元官房長官までもが反対を唱えだした。彼らの目的は、6月に行われる内閣改造ポストと、東京五輪や200兆円と言われる国家強靭化計画などの予算だが、これら“安倍包囲網”を敷く反対派を蹴散らす思惑もあって、訪朝を急ぎだした可能性が高いのです」(前出・政治部記者)
ちなみに、集団的自衛権の行使容認には、連立を組む公明党も猛反発。今国会中に閣議決定に及んだ場合には「連立の離脱」も噂されているが、電撃訪朝で求心力が復活すれば、こうした抵抗勢力をなぎ倒すことも可能になるというわけだ。
「つまり、安倍首相は電撃訪朝で、アベノミクス人気で推移してきた一強政治の復活を狙っている。その目論見の先にあるのは、約5年半続いた小泉政権と同じ長期政権なのです」(同)
だが、そうは言っても電撃訪朝は、安倍政権の思惑だけでは実現しないはず。今回、北朝鮮が日本政府の姿勢に呼応した裏には、明らかに背に腹は代えられない事情が横たわっているのだ。外務省関係者がその背景を口にする。
「実は、これには昨年12月に行われた張成沢国防委副委員長の粛清劇が影響を与えているのです。北朝鮮は石炭をはじめ、年間1200億円もの鉱物を対中輸出してきたが、国家転覆を企てた罪で張氏を処刑したことに中国側が激怒。『貿易契約を結んだ人物(張派の担当者)でないと決済しない』と支払いを拒絶する行為に出た。また、朝鮮総連本部ビル売却を香川県の不動産投資会社に許可決定したことも関係している。安倍訪朝の申し出は渡りに船だったのです」
また、前出の政治部記者もこう指摘する。
「今や、中国という後ろ盾を失った北朝鮮経済の疲弊ぶりは凄まじい限り。そのため、今年2月には南北離散家族の再会事業を再開させるなど、一時は韓国に擦り寄る姿勢を見せたほどなのです。だが、そこに日朝国交正常化と拉致問題解決の話が舞い込んだ。北朝鮮側は経済制裁の緩和、食料、医薬品の援助、戦後賠償などのソロバンを弾いたはず。その見返りに安倍訪朝に耳を傾けだしたと見られているのです」
まさに、魚心あれば水心。