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USA発 新聞、テレビではわからないMLB「侍メジャーリーガーの逆襲」 移籍話が急浮上した裏では何が起きているのか? 7月のトレード期限前に“ヤンキース岩隈”が誕生!?

 大リーグでは7月末のトレード期限を前に、様々な憶測が飛び交っている。日本人選手で名前が出ているのが岩隈久志だ。 7月末トレードは地区優勝の圏内にいるチームが脱落したチームから即戦力になる選手を獲得し、見返りに将来有望なマイナーのホープを放出する形で行われる。動く可能性が高いのは(1)契約最終年、(2)計算できる、(3)ベテランという3つの条件を備えた選手だ。 岩隈は現在34歳でベテランの域に入っており、マリナーズとの契約は今季まで。しかも、故障がなければ3.00前後の防御率を期待できるので、3つの条件すべてに当てはまる。そのうえ実力はエース級なのに年俸は700万ドル(8億4000万円)なので金銭的な負担が多くないのも魅力だ。 岩隈獲得に動く可能性を取りざたされているのはヤンキースだ。 ヤ軍は7月23日現在ア・リーグ東地区の首位だが、同地区は団子レースの様相を呈しており、同率4位のオリオールズまで6ゲーム差しかない。ヤ軍の一番の弱点は先発ローテーションで、エースの田中将大と2番手のピネダはある程度計算が立つが、3番手のサバシアは防御率5点台、4番手のイボルディも4点台後半で安定感を欠き、5番手のノバもトミージョン手術から復帰したばかりで多くを期待できない。そのため終盤の優勝争いと、ポストシーズンを勝ち抜くには7月末のトレードで計算できる先発投手を一人補強する必要があるのだ。 ヤ軍が一番欲しいのは昨年まで在籍した黒田博樹のようにQS(6回以上を自責点3以内)をたくさん稼いでくれる投手だ。今季のヤ軍は不良資産化していたアレックス・ロドリゲスとタシェアラが復活し得点力が大幅にアップした。そのため先発投手が7回まで2、3点に抑えてくれれば、8回と9回はメジャー最強の逃げ切りコンビとなったベタンセスとAミラーに任せられるので、高い確率で勝利をゲットできる。 岩隈は黒田同様、沈む軌道の速球とスプリッターを多投するグラウンドボール・ピッチャーなので、一発の出やすいヤンキースタジアム向きの投手でもある。 岩隈はメジャーで最もコントロールのいい投手の一人と評価されている。毎年夏に『ベースボール・アメリカ』誌が行うアンケートでも岩隈はア・リーグの『ベスト・コントロール』部門の2位に2年連続でランクされている。 マリナーズにはメジャー屈指の右腕フェリックス・ヘルナンデスがいるため目立つ存在ではないが、記者たちからはエース級と認識され、一昨年のサイヤング賞投票では3位に入った。 他球団の評価も高く、レッドソックスは昨年オフ、岩隈なら十分エースとして機能すると見て、中心打者の一人セスペデスとの交換トレードを画策したがマ軍が拒否し実現していない。 この時点で岩隈は4年6000万ドル(72億円)〜5年7000万ドル(84億円)と評価されていた。しかし、今季は開幕から別人のように制球が悪く、3試合連続で4失点以上した後、広背筋(肩から背中の方に伸びる筋肉)を傷めていることが制球難の原因と判明しDL入りした。一度良くなりかけてから、再度悪化し復帰まで2カ月以上かかったため評価は大きく下がったが、復帰2戦目から本来の制球力が復活したため、現在は2年3000万ドル(36億円)〜3年4000万ドル(48億円)レベルの契約をゲットできるまで評価が戻っている。 ヤンキースは2012年の7月末トレードでイチローを獲得し、大いに活用している。それ以外にもヤ軍とマリナーズはここ数年、いくつかトレードを成立させており、7月末までにヤ軍からトレードの申し入れが来る可能性は十分ある。 だが、トレードが成立する確率は10%程度だろう。 マ軍は7月22日現在、43勝51敗でア・リーグ西地区の4位。地区優勝はおろか、プレーオフ進出をかけて1試合戦うワイルドカードを獲得できる望みもなくなっている。そのため7月中には再建モードに入り、7月末トレードで高額年俸のベテランや、伸び悩む中堅どころを2、3人放出する可能性が高い。しかしローテーション入りしている若手が伸び悩んでいるので、あと1、2年は岩隈を先発2番手で使いたいところだ。 それに加え、マ軍は昨年亡くなった任天堂の山内溥元会長が実質的なオーナーだった。山内氏の米国での利益代表だったハワード・リンカーン氏(米国任天堂元会長)が現在も球団社長の地位にある。そのためチームに日本人選手を置いておきたいという意志が強い。 一方、ヤ軍側にも岩隈獲得に見合った交換要員を用意できないというチーム事情がある。ヤ軍はここ数年、目先の戦力補強のためマイナーのホープを次々に放出してしまいマイナーに2、3年後に主力選手に成長しそうな逸材が見当たらない。日本のメジャーファンとしては楽天時代のように岩隈と田中が米国きっての名門ヤンキースの両エースとしてチームを牽引するのを見たいところだが、7月末に実現する可能性は低い。スポーツジャーナリスト・友成那智ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。

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