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“自己診断”は禁物! 甘く見ていると危ない「胃の不調」の正体(1)

 「今年もバリバリ行くぞ!」と、新年早々気合いを入れたいところだが、「どうも胃の調子がスッキリしなくて…」と、浮かない顔のサラリーマンが結構いるのはなぜか。この時期、年末からの暴飲暴食のツケがきたか? と悩み、実際に「胃の痛み」や「もたれ感」「胸やけのような感じ」がする。しかし“震源地”が胃の周辺にあるとは限らず、「受診した患者さんを調べると、逆流性食道炎だったり、心臓と食道に疾患がみられたりするんです」と専門医の一人は言う。

 「心臓も食道も胃に隣接する臓器ですから、ある部位の痛みが他の部位の痛みとして感じられることはよくあります。胃は食道と繋がっているし、心臓に隣接しているわけですから、位置関係から見て“震源地”を間違って認識する恐れは十分あります。症状だけを頼りにすると、本当の原因を見過ごすことになり、よくありませんね」
 加藤消化器内科医院長の加藤親至医師もこう指摘する。

 東京・調布市に住む建築設計士・小林芳光さん(52=仮名)の例を紹介しよう。
 小林さんはある朝、起き抜けに胃が痛むという、あまり経験した事が無い症状に首を傾げた。しかし、しばらくすると痛みは落ち着き「飲み過ぎたから二日酔いかな」と軽く考え放っておいた。
 だが、今度は冷たい水を飲んだ後、同じように胃痛に襲われた。薬を取り出そうと机の一番下の引き出しを開けるため前かがみの姿勢を取ったとたん、酸っぱい味の水分がノドを突き上げ、胸やけ感もする。昼食を取る気分にもなれず、意を決して会社近くのクリニックを受診してみた。すると−−。
 「逆流性食道炎と言われたんです。自分では胸やけ程度のイメージでいたんですが、胃液によって食道の一部が赤くただれているようだ。受診が遅かったら食道に穴が開いていたとも言われました」
 小林さんは苦笑いで話したが、ショックは大きかったという。現在は投薬を続け症状は治まっているが、医師から逆流食道炎の恐ろしさを説かれ、真面目に検診に通っているという。

 また会社員・杉本俊之さん(58)も、厳しい体験をしている。体が大きいせいか食欲も旺盛。昼食に400グラムのステーキをペロリと平らげる。ところが最近、食べているうちに胃がもたれ、箸が進まない。胃に鈍痛も感じられた。
 以前から胃酸過多で胃炎もあると言われていたので、市販の胃酸を抑える常備薬を飲んだが、症状が中々治まらず、不快感は増すばかり。そして昨年末のこと。取り引き先との宴席に招かれた時、好きなビールや酒が出されても進まず、周囲から心配されるほど。もちろん食べ物も口に運ぶ気にならなくて、出るのは脂汗ばかり。
 それでも小1時間ほど経った頃、突然床にうずくまるほどの激痛に襲われ、救急搬送される騒ぎ。宴席もそのままお開きとなった。
 病院での即診の結果、なんと「心筋梗塞」の診断で即刻入院。
 「まさか心筋梗塞だったなんて。胃はキリキリと痛かったのは確かですが、医師から『あと3分遅かったら命の保証はありませんでした』と言われた時は驚きとショックで頭の中は真っ白でした」
 と、杉本さんは当時を振り返る。

 ここではっきりと言えるのは、小林さんも杉本さんも病名は違うものの、痛みを感じた部位、つまり“震源地”は「胃」と思い込んでいたことだ。ところが本当の原因は、胃ではなく、心臓と食道の病気だった。

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