その通りだと思う。汚染水問題を放置すれば、招致は失敗に終わっただろう。ただ、重要なことは、汚染水問題の解決に日本政府が乗り出したということだ。
もともと政府は、福島第一原発の事故は東京電力の責任だという態度をとり続けてきた。東電の責任なのだから、東電が始末をつけるべきだとしてきたのだ。原発事故後、明らかに債務超過になっていた東電を破たん処理せず、上場廃止さえしないという「超法規的措置」を採ったのも、東電がつぶれてしまったら、政府が原発事故の後始末を背負い込んでしまうからだ。
私は、原発事故の責任は三者にあったと考えている。第一は十分な安全対策を怠った東京電力、第二は原発による安価で安定した電力を使用してきた利用者、そして第三は、国策として原子力発電を推進してきた日本政府だ。
原発事故後、東京電力の一般社員は年収を2割カットされるという大きなペナルティーを受けた。東京電力管内の家庭は、事故後28%もの値上げというペナルティーを受けている。ところが、最大の責任者である中央政府だけは、何らペナルティーを受けていない。原発事故は、東電が起こした不始末という位置づけになっていたからだ。
しかし今回の安倍総理の決断で明らかになったことは、政府が原発事故の責任を認めたということだ。責任がないのに国民の血税を投入してよいわけがないからだ。そうした決断をした以上、原発事故の避難者への補償も、国が面倒をみる形に方針を変えるべきだと思う。大した負担ではない。原発事故の自主避難者を20万人として、年間1人100万円を支援したとすると、必要な予算は2000億円となる。これは、5兆円の国家公務員人件費を4%下げるだけで達成可能な額だ。そのくらいの責任は、国家公務員には当然あると思う。
さらに責任が重いのは、原発推進の旗を振ってきた霞ヶ関と政治家だ。幸い、安倍総理が放射線の問題は原発周辺の狭い地域に封じ込めると宣言しているのだから、いまこそ思い切って霞ヶ関と国会を福島県に移転させるべきだろう。
国会や中央官庁の業務がすべて福島県で行われるようになれば、世界は原発事故の影響が本当にないのだと納得するだろう。オリンピックの安全性をアピールする何よりの手段になる。そして、もう一つのメリットは、財政再建に大きく寄与するということだ。国会議事堂、首相官邸、首相公邸、衆参議長公邸、霞ヶ関官庁街などの土地や建物は、とんでもない高値で売却できるはずだ。さらに、国家公務員を福島に移せば、公務員住宅などの関連施設も不要になるから、売却が可能になる。
さらに、政治の中心を福島に移すことによって、被災者目線の政治を行うことができるようになる。安倍総理も、震災復興を政治の最優先課題として取り組みたいと言ってきた。それを実現する最も効果的な手法が、福島県への首都機能移転だ。東京は経済と文化の中心であればよいのだ。