ひと月前に新GMに就任した堤辰佳氏の“お手並み拝見トレード”にしては、何とも小粒と言わざるを得ない。
「日ハムと巨人は、菅野智之“強行指名”以外はこの10年、友好関係にあります。堤GMでなくても成立できたはず。出場機会に恵まれなかった矢野を思っての温情放出だと見る向きもありますが」(ベテラン記者)
このトレードにはウラがありそうだ。
まず、堤氏がGMに就任した際、注目されたのは学生時代の経歴。慶応大学野球部元主将ということは高橋由伸(40)の直系の先輩であり、「矢野が放出されたことで高橋由の出番が増える」と思われた。
「放出された矢野もアヤシイ。矢野はFA権を取得しており、日ハム内部からは『オフに話し合わなければ』と懸念する声も聞かれました」(球界関係者)
後輩・高橋由の働き場を確保し、帰還可能な人員を一時異動させる策略だとすれば、とても“イージートレード”とは言えない。
「巨人が矢貫を獲った理由も勘ぐりたくなりますね。彼は仙台育英の出身ですが、3年間ベンチに入れず、常磐大学で努力して這い上がった投手。キャプテンシーもあり、引退後はコーチもフロント要職も託せる好人物ですよ」(関甲信新学生野球連盟の1人)
矢貫は昨季15試合しか投げていない。北も日ハムの外野定位置争いに敗れている。移籍即スタメンで大活躍の矢野と比較して、混戦のセ・リーグを抜け出すプラス要素とはとても思えない。
「ここ最近、巨人の外部補強は他球団の控えや2番手以降の投手ばかり。是非はともかく、チームが小粒になってしまいました。その流れを止められるか否かで堤GMの真価が問われると思われたのですが…」(前出・ベテラン記者)
無名選手を獲得して活躍すれば、編成スタッフとGMは評価される。中日はホークスの育成でくすぶっていた亀澤恭平(26)を見出し、正二塁手に押し上げた。そういう落合博満GMのような眼力が求められるのだが、今回のトレードからは政治的謀略のにおい以外は伝わってこない。
「主砲・阿部の離脱が長期化しそうなので、第2、第3の補強トレードがある」との噂も駆けめぐっているが、第2の亀澤を探すより大型トレードを仕掛けなければ、チームに緊張感を与えられないだろう。
その方が巨人らしい。