今季のオリックスバファローズは、ゲーム差無しの勝率2厘差で優勝を逃した昨季の雪辱を晴らすべく、大補強をして臨んだ。米球界からかつての西武の主軸打者の中島裕之を、広島からはローテーション投手の柱だったバリントンを、DeNAからは4番打者のブランコを、さらにFAでは打点王獲得経験のある小谷野栄一までも獲得し、オフの話題を一気にさらったほどだった。しかし蓋を開けてシーズンが始まってみれば、開幕直後から最下位に沈み、森脇浩司監督は休養に追い込まれた。そして、8月23日時点では借金18。自力優勝の可能性もとっくに消滅している。
「これで、オフの大粛清は決まったようなもの。その対象者は昨年オフ、複数年契約を交わした選手も例外ではないでしょう。エースの金子千尋もトレードで放出される可能性は十分にあり得ます。巨人、阪神、DeNAはオリックスの大粛清の情報を聞き、有事に揃え、獲得希望リストみたいなものまで作り始めた、と言われています」(ベテラン記者)
最下位争いのオリックスはクライマックスシリーズ進出も厳しい。新加入の選手たちはは揃って不振。さらには負の連鎖で、故障者続出の事態に陥ってしまった。
「ブランコ、中島、小谷野は故障。昨年2位に躍進したリリーフ陣は故障や不振で機能していません。金子は近年、故障などでフルシーズン働いたことがないので、出遅れはある程度予想していましたが…」(同)
オリックスとしてはエースの金子がシーズンを通して働けないのは痛い。しかし、他にエースがすでにいるチームで金子が投げるのであれば話は別だ。巨人と阪神には3連戦の頭を張れる先発投手はほかにもいる。仮に放出となれば、4年総額20億円という破格契約を引き継ぐことになるが、巨人と阪神ならば決して払えない額ではない。
「途中休養となった森脇監督は昨年、一昨年と、チーム改革として、『全員入れ換えるくらい、やらなければダメ』と何度か話していました。選手個々の能力が足らないという意味ではなく、長年にわたって優勝争いに絡んでこなかったので、チーム全体に適当なところで満足してしまう空気が漂っていることを悔やんでいました」(スポーツ紙記者)
昨年オフの大型補強は、そんなチーム改革の期待も込められていたのだ。もっとも、一発を狙う大砲タイプの打者を増やしたことで、前年に快進撃の要因となった、機動力と犠打が使えなくなった。オリックスフロントはその反省から、来季以降は大物狙いの補強を改めるという。主力選手の大粛清はその一環である。
「阪神は金子をトレードで獲得できるとなれば、それなりの交換要員も用意するはず。阪神には伸び悩んでいる投打の若手も多く、逆にオリックスには、阪神の若手を育て上げる自信のようなものも持っている」(在阪記者)
阪神が昨年オフの金子争奪戦に敗れた理由は、代理人との折り合いの悪さもあった。人気入団の宿命とはいえ、その代理人が阪神関係者と合った際、話の内容が一部メディアに漏洩しているとし、一方的に非難された経緯もある。阪神は情報漏洩を完全否定したが、和解には至っていない。しかし、トレードであれば、代理人とは関係のないところで話をまとめることができる。金子以外でもそれは十分にありうる話だ。
「巨人も外国人選手の不振に泣かされています。今季途中加入した外国人も機能していません。そういうことであれば、すでに日本で実績が十分にあるブランコのほうがまだマシということになるかもしれません」(同)
オリックスには最後の手段にして究極のチーム再建案がある。イチローを呼び戻すことだ。広島の黒田の帰還以上に盛り上がるのは間違いないが、その可能性は今季にオリックスがCSに進出するより低い。