CLOSE
トップ > 社会 > 〈企業・経済深層レポート〉 ついに値を上げた大塚家具 ニトリに歯がたたなかった久美子社長の誤算

〈企業・経済深層レポート〉 ついに値を上げた大塚家具 ニトリに歯がたたなかった久美子社長の誤算

家具販売大手の大塚家具が、8月に入り一部メディアによる“身売り”報道に対し、資本増強や他社との業務提携を多面的に検討していると明らかにしたことで、経営難ぶりが一気に表面化した。

「大塚家具は2017年12月期決算で過去最大の72億5900万円の純損益を計上し、2年連続の赤字に陥った。無借金経営で一時は100億円あったキャッシュは10億円規模まで縮小し、すでに泥船状態。そのため、やむを得ずスポンサーの力を借りての再建方針に切り替えたのです」(業界誌記者)

 大塚家具は周知の通り、2015年に父娘の経営権を巡る骨肉の争いで世間を騒がした。創業者で会長として君臨していた父・大塚勝久氏と、長女の久美子社長が株主総会で委任状争奪戦を繰り広げ、最終的に久美子氏が勝ち、経営を掌握したのだった。
「一時の隆盛からジリ貧気味に陥っていた父の経営方針に久美子氏が異論を唱え、異例のお家騒動となった。当時、その久美子氏が目指したのはニトリやイケアのような店づくりと言われていたのです」(経済部記者)

 あれから3年。目指した改革の道のりは険しいものとなり、身売り説まで飛び出す事態となった。そもそも、なぜ大塚家具はニトリに追いつけなかったのか。

 ニトリと大塚家具の経営史、さらに現在の家具に対する世間の意識の変遷を見ると、その理由がおぼろげながらも見えてくる。

 大塚家具は1969年、勝久氏が埼玉県春日部市で家具やインテリアを販売する『大塚家具センター』を設立したことに始まる。
「設立時、勝久氏は問屋経由を止めたことで価格破壊を起こし、瞬く間に人気店となったのです。その手法に当時は業界内で揶揄する声も出たが、法に触れているわけではない。慣習にとらわれ動けない人が多い中で、勝久氏は度胸とアイデアで大塚家具を飛躍させたのです」(業界関係者)

 その後も大塚家具は成長を続け、'80年に株式を公開した。
「勝久氏が次に仕掛けたのが会員制度の導入。ショールームで丁寧に接客するスタイルを取り、今度は大塚家具=高級家具のイメージを定着させたのです」(同)

 一方のニトリは、'67年に札幌市で『似鳥家具店』をスタートさせ、'72年に『似鳥家具卸センター』を設立。当時は傷モノや倒産品を仕入れ、安く売る手法を取っていた。

「その後、少しずつ方針を転換して海外商品の直輸入品を扱い、さらに海外工場の設置、メーカーの子会社化などにより製造・販売を行うプライベートブランド(PB)の道を切り開いた。これがCMのキャッチコピーである『おねだん以上。ニトリ』の所以となったのです」(同)

 大塚家具、ニトリともに始まりは“低価格”だったが、それぞれ高級志向とさらなる安値路線を突き詰め、差別化を図ってきた。そうした中、消費者の意識も変化が生じてきた。

「バブルがはじけ、人口も減り、今は新築住宅も年間100万戸を切る時代。大塚家具の真骨頂だった家具一式購入への対応が求められる時代は終わり、その都度買い替えるパターンが増えてきている。ニトリの場合、安い上にコーディネートの提案にも力を入れ、着実に業績を伸ばしてきたのです」(同)

 いまやニトリはPBが9割を超え、一方で後発の大塚家具は5割前後だという。
「PBはオリジナリティーを出せて他の商品と差別化もでき、低価格で競争力が強い。多くの日本人にとって一時、家具は何代も受け継がれてももつ、高価なものがいいという意識と傾向があった。それが今は、ファッション性が高く、安ければ一代限りの寿命で構わない、さらに言えば、使い捨てでもOKという感覚になっているのです」(前出・業界誌記者)

 そうなると、すでに人件費の安いインドネシア、ベトナムに大規模な自社工場を持ち、巨大物流センターで効率化を図るニトリに対抗して、高級家具、会員制に限界を抱いた久美子社長が大きく舵を切ってニトリに追いつこうとしても、そう簡単にはいかない。

 その結果、ニトリは'18年2月期の連結決算で純利益が前期比7%増の642億円と過去最高。大塚家具は'18年12月期の業績見通しでも純損益が約34億円の赤字という差となって出てしまった。

「今後、新たなスポンサーがついて新生大塚家具が動き出すにしても、どこを目指すかが重要になってくる。すでにニトリと同じことをやっていては自分の首を絞めることが明確となった。資金調達もさることながら、大塚家具ならではのオリジナリティー、ブランド力を改めて見直すことが必要になってくる」(業界関係者)
 久美子社長の今後の選択に注目だ。

社会→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

社会→

もっと見る→

注目タグ