もう落とせない。重賞初Vへ向け、ヒカルオオゾラが万全の態勢を敷きつつある。
「前走の後は米子Sを予定していたんだけど、熱発のために自重した。でも、その後はすぐ熱も下がって、放牧先のグリーンウッドでは順調にケイコを消化できた。いい状態でレースを迎えられそう」と池江寿調教師はうなずいた。
その前走・エプソムCは2着。2年連続で、悔しい思いをした。
「あれは正直、相手が強すぎたね。こちらは完ぺきなレースをしていてあの結果だから、向こうが一枚上だったというしかない」と師はサバサバと振り返った。
2番手からの積極策で速い流れを演出。それでも芝1800メートルを1分45秒7の好時計で粘ってみせた。本格化した大物シンゲンには及ばなかったが、中身はズッシリと重く、重賞を勝てる地力をはっきりと示した。
熱発明けというのが冗談に聞こえるほど、確かに中間の動きは素晴らしい。栗東に帰ってすぐ7月24日には坂路で800メートル56秒7、26日にも坂路で57秒4を出した。そして30日にはCWで6Fから79秒1、ラスト1F12秒3と抜群の脚さばきを披露した。不順な天候が続き、馬場状態は決して良くなかったが、まったく問題にしなかった。
「あと1本追い切れば万全の状態にもっていける」と昨年のリーディングトレーナーは自信を深めている。
さらに、「今回は実績のあるマイル戦にかわる。千八でもある程度はやれているけど、やっぱり一番安心して見ていられるのは千六だから」と続けた。全5勝中4勝がマイル戦。もちろん、秋に見据えるのも、同じ距離のGIだという。
「武豊君がね」と、師は小学校からの同級生の評価を口にした。「彼はこの馬で秋のマイルCSを狙うと言ってくれている。そのためにも、ここでひとつ勝って飛躍につなげたい。キャリアはまだ浅いけど大丈夫。これまでジョッキーがいろんなことを教えてくれているから」
武豊騎手が教え、惚れ込む潜在能力。真夏の新潟、659メートルの直線でいよいよそれが全開となる。