「1点差ゲームをコツコツ拾い(14勝9敗)、着実に勝ち星をモノにしてきた」(在阪記者)
しかし、トラがこのまま快走できるかといえば、疑問符が出るという。トラの内情は惨憺たる数字が並んでいるのだ。
チーム打率2割3分5厘、チーム総得点215、本塁打34本、盗塁23。全てリーグワーストの数字なのである。投手陣にしても、チーム防御率3.79、総失点287もリーグ最下位である。この数字で、よく首位に立てたものだ…というのが正直な感想である。
「今成が報道陣に『首位浮上だが?』と質問され、素っ気ない対応で通りすぎていきました。けれど、後から慌てて戻ってきて、聞き直していましたよ(笑)」(同)
今成もチーム状況を考えたら「リーグ首位」と言われても、ピンと来なかったのだろう。おそらく、他の阪神ナインもそう思ったはずだ。
たしかに、首位に立った68試合を消化した時点での勝敗は、34勝33敗1分で貯金は1しかない。リーグ首位の成績としてはお粗末すぎる。最下位チーム(同時点では広島)とのゲーム差も3.5しかない。3連戦の直接対決で肉薄可能な数値である。セ・リーグが全体的に差がなく紙一重の差で順位が決まっているというわけだ。
「今年のセパ交流戦は、パ・リーグが61勝44敗3分で終了し、セ・リーグを圧倒しました。今年のセは開幕前から混戦になると予想されたように、どのチームも首位独走になるような決め手に欠いている。そこで、元から交流戦にいいイメージを持っているパのチームに、セの6球団が揃って餌食にされたわけです。交流戦でパ・リーグがセ・リーグに負け越したのは過去に一度しかないですから」(プロ野球解説者)
ここで、なぜ阪神が1点差ゲームで高勝率を挙げられる背景に改めて注目してみよう。チーム防御率はリーグワーストでも、セ・リーグトップのセーブ数を稼いでいるのは呉昇桓で、ホールドポイントのトップも阪神の福原忍だ。また、奪三振王も藤浪晋太郎である。藤浪、福原、呉昇桓という“個々の力”が勝因なのかもしれない。
「セ6球団のなかで絶対的なクローザーを持っていないのは広島だけ。DeNAの山崎と、巨人の澤村は息切れし始めており、阪神が1点差ゲームに強いと言われるのは、福原から呉昇桓に繋ぐスタイルが確立されているからともいえます」(同)
開幕から不振が続いていたマートンと、メッセンジャーも本来の調子を取り戻しつつある。他球団が夏場にさしかかるこの時期に、お疲れモードに入っているのに対して、阪神はようやくエンジンが掛かってきたとも言えなくはない。
チーム関係者がこう続ける。
「いや、怪我で出遅れていた今成が一軍ベンチに帰って来たのがいちばん大きい。今成は声だし要員であり、ムードメーカーです。彼のおかげ」
ただ、虎ファンはリーグワーストの部門が軒並み多い現在の状況に、やや悲観的だという。虎のベンチにムードメーカーが復帰して状況が改善したのであれば、虎ファンの中にもムードメーカーが必要だと言われてしまうかもしれない。