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「寝ても疲労が抜けない」悪循環を断ち切る『ぐっすり快眠』に導く五つの心得(1)

 9月半ばというのに、相変わらず暑い日が続く。こんな時、決まったように悩むのが睡眠不足。「今年は『夏バテのせいか疲れが取れない』『熟睡できない』と訴える人が増えている」と、医療関係者は言う。

 「疲労」は、「痛み」「発熱」と並ぶ3大シグナルと言われ、我々が生命維持をしていく上で、無くてはならない重要な警報装置というわけだ。シグナルが点滅したら、何はともあれ休息が必要。
 中でも「睡眠がもっとも重要」とされながらも、たやすくはない一面がある。
 「一晩ぐっすり寝れば疲れは取れる」といわれる反面、「一晩で疲れがとれる時ばかりではない。体のだるさが続いている」など、睡眠に対する疑問も残る。

 確かに、“健康的(生理的)な疲労”であれば、しっかり休んで疲れを処理して再び元気になるが、休息を取っても回復しない疲労があるのも事実。それは「病気からくる疲労」と指摘する医療関係者もいる。
 血液や生理学分野で活躍されている医学博士・内浦尚之氏はこう説明する。
 「睡眠や休息をとっても疲労が回復しない場合、病気が疑われます。特に強い疲労感をともなう病気は数が多く、癌や糖尿病、肝機能障害、呼吸器不全などがあります。また、こうした疾患が無い場合でも、生活に支障をきたすほど極度の疲労状態が長く続く『慢性疲労症候群』という病気も最近は増えている。疲労に対する考えを軽く見てはいけません」

 こんな例もある。都内に住むKさん(49)は、電化製品メーカーに勤めるサラリーマン。会社はこのご時世、ご多分に漏れず業績が悪く、いつ自分のクビが飛んでもおかしくない。そんな状況に怯え、半年ほど前から眠れない夜を過ごしていた。
 かかりつけの内科医に相談すると睡眠導入剤を処方されたKさん。しかし、中学と高校に通う2人の子どもや自分たちの将来を考えると目は冴えるばかりで連日午前3時や4時まで悶々と過ごすことになる。

 結局、Kさんは新たに紹介されたメンタルクリニックで再診を受けた。付き添った奥さんに告げられた医師からの診断は「単なる睡眠不足ではなく、“うつ”による症状を疑うべきでしょう」だった。
 「強いストレスで交感神経が刺激され、副交感神経が支配する眠りに入るのを妨げる。体は眠りを欲しているのに、一種の興奮状態に置かれるため眠れないのでしょう。辛いですね」(同メンタルクリニック・田口豊院長)

 加えて睡眠導入剤が効かないことについては、
 「うつによる不眠には、睡眠導入剤だけでは効果が不十分なことがあります。うつ病の原因に沿った治療が必要になり、心療内科や精神科などの治療を受けた方がいいですね」
 と指摘する。

 体が疲労困憊(ぱい)なのに眠ることができず、さらに疲労を重ねていく悪循環。放置すれば自ら命を絶つような最悪の結末もありうるのだ。
 いずれにしても、「寝不足は脳にダメージを与える」「睡眠不足の人はメタボになる」など、前で挙げた病気以外でも、さまざまな障害が指摘される。言い換えれば、疲労が蓄積すれば同じ現象が起きても不思議ではないということ。

 ただし、自分から進んでやるような好きな事や、やり甲斐を感じる仕事をしているときは疲労感も少ない。一方、イヤイヤやらされている作業はすぐ疲れてしまう。
 つまり疲労感は、別な仕事の達成感、周囲からの期待に応えようとする責任感などによって、度合いに大きく影響するのだ。

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